ネットに侵食され続ける広告収入急減のマスメディア

2014年 日本の広告費

2014年 日本の広告費 - Knowledge & Data(ナレッジ&データ) - 電通ウェブサイト
電通グループが提供しているサービスは、その全てが独自の視点に基づく深いインサイトに根差しています。人を動かす心のツボこそが、まさにインサイトであり、電通が最も大事に、そして最も得意としているスキルです。

大変興味深いレポートですが、「「2014年 日本の広告費」は6兆1,522億円、前年比102.9%」と報告されています。

「2014年 日本の広告費」は6兆1,522億円、前年比102.9%

— 総広告費は6年ぶりに6兆円超え

インターネット広告費は初の1兆円超え

21業種中14業種が前年を上回る

2014年(1 〜 12月)の日本の総広告費は6兆1,522億円、前年比102.9%で、消費税率引き上げの影響があったものの、通期では3年連続で前年実績を上回った。

「インターネット広告費は初の1兆円超え」とは、実に象徴的であります、その意味するところはあとで検証いたします。

さて過去の電通のレポートも利用して今世紀(2001~2014年)の媒体別広告費の推移を検証しておきます。

見やすいように図表を作成してみました。

■表1:媒体別広告費の推移(2001~2014年 単位:億円)

■図1:媒体別広告費の推移(2001~2014年 単位:億円)

f:id:kibashiri:20150331124812p:image

ここ14年、総計として広告費は6兆円前後で推移していますが、4マスの広告費の減少とインターネットの広告費の伸びが顕著なのが見て取れます。

媒体別に全広告費に占める割合(%)の推移をグラフ化してみましょう。

■図2:媒体別広告費構成率の推移(2001~2014年 単位:%)

f:id:kibashiri:20150331125706p:image

4マスのシェアをインターネットが侵食していることがわかります。

2001年と2014年の媒体別広告費構成率を円グラフで対比してみましょう。

■図3:媒体別広告費構成率の対比(2001と2014年)

f:id:kibashiri:20150331135442p:image

f:id:kibashiri:20150331135459p:image

マスメディア以外の「プロモーションメディア広告費」は、34%->35%とほとんど変化していないのに、4マスは新聞が 20%->10%、雑誌が7%->4%、ラジオが3%->2%、テレビが35%->32%、と、すべてシェアを落としています、4マス総計では 65%->48%の減少です。

対照的にインターネットは1%->17%とシェアを急成長させています。

既存マスメディアへの広告費をインターネットが侵食していることは明らかです。

2001と2014年の媒体別広告費の増減と伸び率を押さえておきます。

■表2:媒体別広告費の増減と伸び率(2001と2014年)

マスメディアの中でも、新聞広告費の減少ペースが尋常ではないことがわかります。

今世紀に入って、1兆2027億から6057億へと半減してしまっています。

・・・

まとめます。

もちろんマスメディアの収入源は広告だけではありませんが、主要な収入源である広告費をひとつの指標(インデックス)として分析してみましたが、斜陽産業としての「マスメディア」の現状を十分に検証できたと思います。

四マス(マスコミ四媒体)と呼ばれる、新聞、雑誌、ラジオ、テレビでは、新聞・雑誌の発行部数、ラジオの聴視率、テレビの視聴率、軒並み減 少していることは、みなさんご承知のとおりですが、その理由のひとつにインターネットの普及があることは、今検証した通り、否定しようがありません。

インターネットがマスメディアに対抗しうる優良な媒体なのかといえば、議論が当然あるところでしょうが、インターネットの普及が産業としての既存マスメディアを広告収入減少に追い込んでいるのは間違いありません。

この検証結果をもって短絡的に「インターネットVSマスメディア」的な論を持ち出すことは避けるべきでしょうが、当ブログとしてはこのマスメディアの広告収入激減の事実と、近年の「マスメディア報道の劣化」には、強い因果関係があると考えています。

一般の産業に置き換えた場合わかりやすいと思います。

優良なプロダクツ(製品)が出せないから産業として斜陽する、産業として斜陽したから体力がなくなりますますプロダクツ(製品)の精度が粗悪になる、プロダクツ(製品)の精度が悪いからユーザーニーズから離れ売り上げ減少につながってしまう、完全に悪循環です。

マスメディアのプロダクツ(製品)は、放送なら各番組であり、紙媒体ならば各記事です。

「マスメディア報道の劣化」が続ける時期と産業としてのマスメディアが斜陽続ける時期が一致しているのは偶然でしょうか。

卵が先か鶏が先か、「報道の劣化」が先か「産業の斜陽」が先か、よくわかりませんが、4マス全体が媒体として危機的状況にあることは間違いないようです。

特に新聞は、広告媒体としては救いようがありません、今世紀に入って広告収入が半減してます。

このエントリーが読者の考察の一助になれば、幸いです。

(木走まさみず)

タイトルとURLをコピーしました