札幌市の飲食店に対する時短営業と酒類提供停止の要請期間初日を迎えた2日、飲食店主らからは相次ぐ要請への不満が聞かれ、店内にノンアルコールビールの缶を並べ履行を偽装する店も現れた。新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的に31日までを要請期限とするが、早くも実効性に疑問が出ている。
「オリンピックは夜までやっているのに営業を制限するのはおかしい」。2日夕、多くの人出でにぎわう歓楽街ススキノで居酒屋の店長を務める男性(43)は不満を口にした。
6月20日までの緊急事態宣言下では要請に応じてきたが、その後の「まん延防止等重点措置」や道の特別対策期間中は深夜まで営業を続けた。今回のまん延防止措置で午前5時~午後8時とされた営業時間の要請も酒類提供の終日停止も応じないという。男性は「これが最後だと思って応じたこともあったが、終わりが見えない。僕らも生活がかかっている」と話した。
一方、カラオケスナックを営む60代の男性マスターは相次ぐ要請に「またですかという感覚。(新型コロナは)本当にアルコールだけのせいなのか疑問」と言いつつ「酒を出せないなら店を閉めるしかない」と渋々要請に応じる。再三の要請に応じない店は20万円以下の過料対象となるが「過料を払えば店を開けてもいいという雰囲気になっていて、営業している店に客が集まっている」と憤る。
ススキノ交差点近くのギョーザ専門店「餃子の山岡家」は、偶然にも2日にオープンを迎えた。運営会社「丸千代山岡家」(本社・札幌市)の担当者は「一番宣伝したい時なのに残念だ」。24時間営業のため店内での飲食は午前5時~午後8時とし、ほかはテークアウトで対応する。道は要請の履行について準備期間を考慮し4日まで猶予を認めており、5日から行う。
道は5日以降、要請に応じる店との不公平感をなくすため、市と連携して店舗を巡回し、応じない店をチェックする。だが、ススキノの居酒屋店主の女性は逆手にとる。「1カ月は長過ぎ。客は理解のある常連に限り、ノンアルコールビールの缶を並べておいて、見回りが来たら『これを飲んでいます』と言ってもらう」。市民の間にも自粛疲れが広まる中、実効性の確保が課題となっている。【米山淳、岸川弘明】