【パリ=三井美奈】フランスで大火災が起きたノートルダム大聖堂で、捜査当局は16日までに、屋根の改修を行っていた業者や作業員ら約30人を事情聴取した。17日付パリジャン紙は、作業足場で起きた電気ショートが発火につながった疑いがあるとして、捜査していると報じた。
同紙によると、火災は、尖塔(せんとう)を支える屋根の骨格付近で発生。聖堂は昨年以降、尖塔や屋根の改修工事が行われ、約500トンの鉄パイプを使った足場が組まれていた。当局は、移動用のエレベーターで電気ショートが生じた可能性があるとみているという。尖塔は、出火から約1時間後に倒壊した。
16日に公開された聖堂内の映像では、大理石の床の上に屋根が崩落し、焦げたがれきとなり堆積。石柱の骨格は残り、「バラ窓」と呼ばれるステンドグラス、祭壇の十字架は焼失を免れた。パイプオルガンは放水で一部損傷したが、焼け残ったという。聖堂内の絵画は、修復のためルーブル美術館に移送された。16日には、倒れた尖塔の頂上にあった風見鶏の銅像が付近で回収された。
ルモンド紙(電子版)によると、尖塔や鉛製の屋根が崩落した際、火炎は約800度の高温に達したとみられる。リーステール文化相は16日、聖堂北側の身廊の柱が脆弱化(ぜいじゃくか)し、倒壊の恐れがあると指摘。南側の鐘楼も炎で耐久度が弱まったと述べた。
大聖堂の管理担当者は16日にラジオで、聖堂内は火災防止のため1日3度の点検を行っていると述べた。一方、屋根の骨格部分に防火壁やスプリンクラーはなく、初期消火が遅れる原因になったとの指摘もある。検察によると、15日夕、火災報知機が2度鳴ったが、最初の警報時に火炎は見当たらなかった。23分後、2度目の警報後に出火が確認されたという。