スウェーデンのカロリンスカ研究所は5日、2015年のノーベル医学・生理学賞を、微生物が作り出す有用な化合物を多数発見し、医薬品などの開発につなげ た大村智・北里大特別栄誉教授(80)ら3氏に授与すると発表した。大村氏が見つけた化合物は熱帯地方の風土病の薬などで実用化しており、医療や科学研究 の発展に大きく貢献した功績が評価された。
日本のノーベル賞は昨年の物理学賞3人に続く受賞で計23人に。医学・生理学賞は利根川進氏、山中伸弥氏に次いで計3人となった。
大村氏は昭和50(1975)年、静岡県内の土壌中で見つけた新種の放線菌から、寄生虫や昆虫をまひさせる機能を持つ抗生物質を発見。この化学構造を改良し、米製薬大手メルクが家畜の寄生虫駆逐剤「イベルメクチン」を開発した。
この薬剤は57年、アフリカなどの風土病である「オンコセルカ症」にも極めて高い有効性を持つことが判明。メルク社が治療薬として製品化した。
オンコセルカ症は河川盲目症とも呼ばれ、線虫の幼虫が目に侵入して発症する。途上国では失明の主な原因となる恐ろしい病気だが、イベルメクチンによって症状の悪化を防いだり、感染を防いだりすることが可能になった。
大村氏はイベルメクチンの特許権を放棄。世界保健機関(WHO)を通じ、アフリカや中南米などで延べ10億人以上に無償提供され、多くの人々を失明の危機から救った。
2013年にコロンビア、昨年9月にはエクアドルがオンコセルカ症の撲滅を宣言。イベルメクチンは他の寄生虫や、ダニによる感染症の薬としても広く使われている。
大村氏はさまざまな機能を持つ化合物を微生物から400種類以上も発見。薬の開発だけでなく、生化学や有機合成化学などの研究を飛躍的に進展させた。
授賞式は12月10日にストックホルムで行われ、賞金計800万スウェーデンクローナ(約1億1500万円)が贈られる。