人間関係が上手くいかなくてイライラする。
ちょっと落ち込んでいる時にSNS上で公開される友人たちの楽しそうな投稿を見ると、自分と友人を比較してしまい、気持ちがさらに凹む。
そんなことは、ただ日々を過ごしているだけで、誰しも良くあることであり、何かしらのストレスを感じることは日常茶飯事である。
社会に身を置いているのであれば、大半の人がストレスはあるものとして過ごしていると思うが、やはりストレスを感じない“ストレスレスな生活”に憧れる。
そんな生活を夢見つつも、ストレスを感じずに過ごせるのは厳しい修行を乗り越え、悟りを開いたお坊さんくらいだろうなと半ば諦めながら手にとった一冊の本。
『365日を穏やかに過ごす心の習慣。』というタイトルで、私は半信半疑でありながらもページをパラパラとめくってみた。
すると、何やら笑顔の仏画が幾度となく現れた。そのニコニコ顔の仏画には修行をしていない私でも分かりやすい言葉が一緒に添えてあった。
下の言葉は仏画に添えられていた言葉の一部である。
・幸せ祈るときはまわりの人の幸せも祈りなさい 一人では幸せになれないのだから
・怨む人も 憎む人も いてくれたおかげで 今日がある
・苦しみがなくなるのではない 苦しみでなくなるのです
こんな考え方もあるのか。
人と比べて相手を憎んだり、妬んだりするのではなく、考え方一つで「感謝の気持ち」が生まれたり、苦しみじゃなくなるのであれば、今は難しくても、いつかそんな考え方を身につけたいものだ。
他にも本書には、心が波打つことなく、穏やかにすごせるという考え方を紹介していて、42点の知恵が詰まっていた。
著者でありハワイ在住のお坊さん・荒了寛さん(天台宗ハワイ開教総長・大僧正)に話を伺った。
「人は誰しも、多かれ少なかれ苦しみや悩みをかかえて生きています。苦しみや悩みは、さまざまなつらい感情をもたらし、まるで生活習慣病のように“心の病”となって慢性化しかねません。
では、どうすればよいかといえば、“心によい習慣”をつける必要があります。ほんの少し物ごとの見方や考え方を変えるだけで、心は不思議なくらい前向きになり、明日への希望がわいてくるものです。10歳から仏門に入った私も、はや70数年を経て、今年85歳となります。仏門は心の修行でもあります。
本書は読者の皆様方の生活に活かしていただけるよう、できるだけ仏教用語は使わずにわかりやすく、工夫しました。文章だけでは読みにくい、感じにくいと思われる読者もいらっしゃるかと思い、毎年カレンダーでご好評をいただいている仏画とちょっとした易しい言葉も掲載しております。気の向くままにページをめくってくださればよいかと存じます。どこから読んでも構いません。
あなたの心に平穏と喜びが訪れることを願って。合掌」
45歳の時に天台宗布教のためハワイへ渡り、いまなお海外開教師として日々奔走しておられる荒了寛さん。読者の代表として、荒了寛さんから合掌をいただき、ありがたく、ほんわかと温かな気持ちになった。
私自身、パラパラとページをめくってみた結果、自分ではなかなか思いつかない考え方を本書から教わったが、だからと言ってストレスフルな日々から完全に脱出できるわけではない。
しかし、今後ストレスを感じた時に、ハワイで並みならぬご苦労をなさってきた荒了寛さんの言葉とニコニコ顔の仏画を思い出すだけでも、波立つ心を少し落ち着かせることはできるのではないだろうか。
「すっきり解決はできなくとも、あなたの心が軽くなる糸口がつかめる書になれば……。」と荒了寛さんは出版時の想いを教えてくれた。
憧れのストレスレスな生活は厳しい修行をして悟りを開かなくても、考え方をちょっと変えれば手に入るのかもしれない。
(茶谷/boox)