バイオマス発電所、実態は「ごみ焼却炉」 福島・伊達で建設中 住民が操業中止要求

伊達市梁川町の工業団地に建設中のバイオマス発電所を巡り、地元住民が不信感を募らせている。燃料は県外から持ち込まれる建設廃材と廃プラスチックを使う予定で、実質的に「ごみ焼却炉」だからだ。事業者側は来年5月の運転開始を目指すが、納得できない住民は大気汚染など周辺環境への影響を訴え、操業中止を求めている。(福島総局・横山勲)

周辺環境への影響危惧、市議会は全面撤回求める

 伊達市に建設中の「バイオパワーふくしま発電所」は出力1万3500キロワットで、群馬県の廃棄物処理会社「ログ」の関連会社「ログホールディングス(HD)」が運営する。建設廃材と廃プラを6対4の割合で混ぜた燃料を、年間6万6000トン使用する。2020年5月に経済産業省から再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)の新規認定を受けた。

 燃料に使うのは、ログ社が解体業者などから買い取った建設廃材などを仙台、群馬の自社工場で加工したチップ。このチップを、バイオパワーふくしまがログ社から購入して調達する。

 福島県県北地方振興局によると、産業廃棄物が「ごみ」か「燃料」かの定義付けは環境省の通知に基づく。バイオパワーふくしまが使うのは、あくまでログ社から購入した「有価物」。処理工程が管理されていることなどから「燃料」に定義されるという。

 このため発電所は各種法律上の規制対象となる「産業廃棄物処理施設」ではなくなる。燃焼炉の位置付けも「焼却炉」ではなく「ボイラー」になるが、産業廃棄物を燃やすという作業の中身は変わらない。

 住民は環境への影響を危惧する。発電所は炉を冷やすために1日平均1700トンの地下水をくみ上げたり、温排水を阿武隈川に放出したりする。事業者側は「フィルターで基準値以下に除去できる」と説明するが、燃焼時は窒素酸化物やダイオキシン類が生じる。

 地域の不信感の高まりを受け、伊達市議会は21年6月に発電事業の全面撤回を求める請願を全会一致で採択。住民らは東北経済産業局に計画認定の取り消しを求める陳情書も提出した。しかし事業者との見解の溝は埋まらず、話し合いは行き詰まりの様相をみせる。

 住民団体「梁川地域市民のくらしと命を守る会」の引地勲代表は「発電事業は地域に何の利益もない。なぜ他県の企業の利益のために住民が不安と負担を引き受けなければならないのか」と憤る。団体は環境問題に詳しい弁護士を招いた勉強会などを開き、反対運動を続けている。

 バイオパワーふくしまは今後、公害防止に関する協定を伊達市と締結するとし、担当者は取材に「住民の不安を解消すべく対応する。決められたことをしっかり順守する」と話す。

ごみか燃料か、基準あいまいで県が行政指導も

 「バイオパワーふくしま」で燃やす産業廃棄物は「ごみ」か「燃料」か。福島県は国の通知を基に「燃料」と判断するが、昨年12月には一時「ごみ」とみなし、保管場所からの撤去を求める行政指導をしていた。

 住民団体によると、発電所を運営するログHDは2021年12月、東北自動車道国見インターチェンジ(IC)近くの農地を資材置き場に転用して「燃料」を一時的に保管。廃プラスチックや木くずなどが大量に運び込まれ、うずたかく積まれていた。

 保管場所には塀が設けられているが、強風のたびにビニール片などが周辺に飛散。地元住民から苦情が寄せられ、県北地方振興局が昨年12月に状況を確認した。

 環境省の13年通知は、産業廃棄物を「有価物」とみなす判断基準の一つとして「物の性状」を挙げる。再生利用の用途に要求される品質を満たし、飛散や流出、悪臭などで生活環境に支障が生じない状態にしなければ、産業廃棄物は「ごみ」になる。

 県北地方振興局環境課の担当者は「有価物の状態では規制の対象外だが、明らかにビニール片が飛散していたので『ごみ』と判断して行政指導を行った」と説明する。現在は大部分の「ごみ」が撤去され、残った「有価物」には飛散防止のネットがかけられている。

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