名古屋市で開かれている生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で、気候変動対策に有効として世界各国で推進されるバイオ燃料に関する決議について、バイオ燃料の輸出大国であるブラジルと、「森林がバイオ燃料を作るために切り倒されている」と主張するアフリカ諸国などが対立している。かつてバイオ燃料の推進が食糧価格上昇の要因になったと批判されたが、生物多様性にも影響を及ぼすことが、問題点として浮かび上がっている。(杉浦美香 杉村奈々子)
25日、ブラジルはセミナーを会場近くで開催、同国環境相も出席して、バイオ燃料が生物多様性に悪影響を与えることがないことを訴えた。
バイオ燃料はトウモロコシやサトウキビ、アブラヤシなど植物を発酵させて生産するため二酸化炭素の排出量がゼロと計算される。このため、米国や欧州はバイオ燃料をガソリンなど化石燃料の代替燃料として推進。日本もガソリンにバイオエタノールを混ぜることを検討中だ。
しかし、アフリカやアジアの途上国では外貨を稼ぐことができるため畑がバイオ燃料用に転作され、森林の恵みで生活する先住民が畑により居住地を脅かされる事態も起きている。25日の会議でも、ノルウェーの先住民、グンブリット・レッターさんは「伝統的に住んできた土地が奪われ生活が乱される。そこに単一作物が植えられて生物多様性にも悪影響を及ぼす」と訴える。
一方、バイオ燃料の必要性は認めつつも、何らかの規制を求める声もある。スイス政府のフランツ大使は「バイオ燃料の推進は温暖化対策として重要だが、食糧や生物多様性に影響がないようにCOP10でガイドライン作るべきだ」と主張している。