新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、バナナやマンゴーといった海外産フルーツに品薄感が広がっている。産地の都市封鎖(ロックダウン)で収穫作業が停滞したり、航空機の減便で貨物量が減少したりしているためだ。小売店では値上げの動きも出ている。
東京都新宿区の青果店「新宿八百屋」では今週、フィリピン産バナナ一房が税抜き95円で店頭に並んだ。2~3月よりも20円ほど高い。運営会社の荒巻秀俊専務は「仕入れが困難になっている。値上げしても利益はほとんど出ない」と話した。
日本バナナ輸入組合(東京)によると、輸入バナナの約8割を占めるフィリピン産の4月下旬の輸入量は、前年同期より約1割減った。フィリピン政府が3月中旬から首都圏などで人の出入りを制限する都市封鎖の措置を講じ、収穫や袋詰めの人手が不足したためだ。東京都中央卸売市場によると、フィリピン産バナナの3月の卸売価格は1キロあたり179円と前年3月より7%高く、前月比で8%上昇した。
代替が期待されるエクアドルやペルー、コスタリカ産の入荷も不安定で、都内の業者は「注文に見合う量が入らない」と頭を抱える。
一方、「巣ごもり消費」の影響で需要は増えており、首都圏のスーパーではバナナの5月1~10日の売上高は前年同期比で23%増。4月も18%増だった。
バナナ以外の調達にも影響が及ぶ。輸入業者の昭和貿易(大阪市)はメキシコ産ライムやタイ産マンゴーなどを空輸で仕入れる。多くの商品は、旅客機の腹部にあるベリーと呼ばれるスペースに手荷物などと一緒に積み込まれる。
しかし、各国の航空会社の相次ぐ国際線の減便・運休で、同社は週1回だったライムの仕入れを4月中旬から2週に1回に減らした。輸送費の上昇で仕入れコストは2割ほど増え、担当者は「仕入れの手配が難しくなった」と話す。空輸ではマスクなどの医療物資が優先され、「フルーツを一緒に載せられないケースもある」(別の業者)という。
メキシコ産アボカドは、世界的なコンテナ船の輸送量縮小の影響で、東京都中央卸売市場での3月の取扱量は前年比で2割減少し、平均価格は5%上昇した。米国産レモンや5~6月が旬のアメリカンチェリー、南アフリカ産のグレープフルーツの入荷減を懸念する声もある。