軽自動車のスポーツカーが2014年、ホンダとダイハツから相次ぎデビューしそうだ。東京ビッグサイトで11月23日に開幕する「第43回東京モーターショー」にホンダが「S660コンセプト」、ダイハツが新型「コペン」を参考出品することになった。いずれも市販されるのは確実で、軽自動車市場はバブル末期以来のスポーツカーウォーズとなるのは間違いない。
「ホンダS660」というネーミングを聞いて、ピンとくるファンは多いだろう。1960年代にホンダが本格的な4輪メーカーを目指して放った渾身のスポーツカーが「ホンダS600」。
創業者・本田宗一郎氏の理想を追求したSシリーズは、S500、S600、S800と発展した。以来、スポーツカーを意味する「S」と排気量を示す数字の組み合わせは、ホンダの本格オープンスポーツカーの称号となった。近年では「S2000」が記憶に新しい。
S660はNSXと同じミッドシップを採用か
参考出品される「S660コンセプト」(画像は、ホンダのリリースより)
参考出品される「S660コンセプト」(画像は、ホンダのリリースより)
ホンダは今回のモーターショーに本格的なミッドシップスポーツカー「NSXコンセプト」も出品する。こちらは往年のNSXの復活で、今回は高効率・高出力のハイブリッドAWD(4輪駆動)に生まれ変わる。NSXがポルシェやフェラーリと肩を並べるスーパースポーツカーなのに対して、Sシリーズは若者でも手が届くライトウェイトスポーツカーであるのが特徴だ。ボディーはオープンの2シーターで、スポーツカーの基本である後輪駆動。
今回のホンダS660コンセプトも、この基本に忠実だ。ホンダは詳細を発表していないが、エンジンをリアシート後方にマウントするミッドシップレイアウトを採用するのは間違いない。排気量は660ccと軽の枠内に収まるものの、NSXと同じミッドシップであるところが、理想主義のホンダらしい。ホンダは「ダイナミックな先進のスタイリング、ドライバーの空間を徹底的に追求したスーパーコックピットインテリアなど斬新な試みを随所に施した次世代軽オープンスポーツモデルだ」と説明している。
ダイハツ「コペン」はFF?
一方、ダイハツは2012年に生産を中止した2シーター・オープン「コペン」を復活させる。こちらもメカニズムの詳細は不明だが、前作同様、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)レイアウトになるとみられる。この点は本格スポーツカーのホンダS660とは対照的で、コペンは走行性能よりもスタイルを楽しむスペシャリティーカーに近い。事実、ダイハツは「樹脂外板をカバーケースのように脱着でき、自由に着せ替えられる」としており、「今まで経験したことのない、走る楽しさ、持つ楽しさを極限まで追求したモデルだ」という。
日本国内ではバブル末期の1990年代初頭、軽の本格スポーツカーが次々と登場した。ホンダビート、スズキカプチーノ、オートザム(マツダ)AZ-1などだ。いずれもバブル全盛期に開発され、1989年のモーターショー参考出品を経て市場に投入された。軽の枠内で最高の理想を求めたスポーツカーで、一世を風靡した。これらのスポーツカーが姿を消した後、2002年にデビューし、長く孤高を保ったのが前作のダイハツコペンだった。
その意味で、軽のスポーツカーが相次ぎ市場に投入されるのは、20年ぶり2回目ということになる。この間、自動車を取り巻く環境は変わったが、スポーツカーを維持費の安い軽で所有するメリットは大きい。若者だけでなく、子供が独立したシニア世代の夫婦にも軽のスポーツカーは似合うだろう。ホンダとダイハツが成功すれば、スズキが名車カプチーノを復活させる可能性だって夢ではない――ファンの間では、そんな期待も高まる。