パワースポット 京都でも次々誕生 オカルト信仰危惧も

「パワースポット」と呼ばれる新たな「霊場」が京都でも次々誕生。全国から人が集まっている。多くは自然や寺社の中にあり、そこに立ったり触れたりすると、良縁や仕事での成功への力がみなぎるのだとか……。「イワシの頭も信心から」と言われる通り、信仰の対象は人それぞれ。しかし、既存の宗教界には参拝者の増加を歓迎しつつも、オカルト信仰につながることを危惧する声もある。
 源義経が修行したことでも知られる鞍馬山(標高570メートル、京都市左京区)。鞍馬寺はその深い森に包まれている。パワースポットとされているのは本殿前の広場だ。六角形をかたどった石畳中央の三角形の石に立ち、両手を広げる--。休日には、順番待ちで数百人の列ができることもある。
 1200年の歴史がある鞍馬寺にあって、このパワーストーンは約30年前に作られたばかり。同寺の教えを表現したもので、信者は踏まないようにしてきた。だが昨年夏、現地を訪ねた有名芸能人のパワーを受けるような仕草がテレビで放映され、翌日から長蛇の列ができるようになった。
 「最初は戸惑いもあったが、いろいろな信仰の形があっていい。本堂の前だし比叡山も眺望でき、心が落ち着く根拠はある。信仰の世界に目を向ける人が増えるのはいいこと」。鞍馬山博物館の曽根祥子学芸員は歓迎する。一方で「パワーをもらうだけでは終わらず、人に親切にするなど、仏の心に気付いてほしい」とブームに乗る人たちに注文する。
 平安中期の陰陽家、安倍晴明を祭る晴明神社(上京区)のクスノキも「触れるとパワーが得られる」と話題だ。
 川崎市の会社員、元木健一さん(36)と妻涼子さん(29)は「鞍馬寺の石の上に立つと、確かにパワーを感じた。何かしら引き寄せられるものがあるからこそ、石を作ったのだと思う」と話し、クスノキにも手を添えた。
 パワースポットは寺社とは限らない。水にもパワーが込められており、賀茂川と高野川が合流する左京区・出町柳近くの「デルタ地帯」には強大な力が集まっているというのだ。府鴨川条例が08年4月に施行されるまでのバーベキューのメッカが、ある意味、本当の「聖地」になった観がある。
 一方、京都市内の寺院の関係者はブームについて「パワーをもらって、ある能力が途端に備わるはずがない。超能力やオカルト信仰につながらないか心配だ」としている。【熊谷豪】

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