パーツ分解し自在に 遊び心あふれる「モリカゲシャツ」のデザイン

 【ファッション・ナビ】
 「モリカゲシャツ」-なんだかクラシックでミステリアスな響き。「誰が作って誰が着ているのか分かる服を」との思いを込めて丁寧につくり続ける、京都のシャツ専門店だ。百貨店などには出店せず、一つの店舗とネットのみで販売をしている。
 「カジュアルシャツとドレスシャツ、きっぱりと区分けされているシャツを、そんな垣根をなくしてネクタイなしで通用するような、もっと柔軟なシャツを作りたかった」とモリカゲシャツ代表の森蔭大介さん。
 シンプルな白シャツはもちろん、ボーダーにギンガムチェックなど遊び心あふれるデザインが並ぶ。後ろ身頃につけられたハンガーループや袖口、襟にはポップな柄の生地が施され、大きめのボタンはなんともキッチュな印象を受ける。
 素材は綿や麻など天然素材のみ。密度が高くしっかりとした生地を使用しているので、しわになりにくいのが特徴。化繊を入れないのは、年月を経ると風合いが異なってしまうからだという。
 平成5年にショップを始めたときには、オーダーメードの専門店だった。ウエディングドレスから舞台衣装まで依頼されれば何でも作っていたが、転機が訪れたのは自分が作ったシャツを見たお客さんが「それいいね。作ってよ」の一言から。9年にシャツ専門店として再出発を果たした。
 上着としてのシャツは、ある程度、形が決まっている。歴史も浅い。しかしだからこそ、「ちょっとしたアイデアで新しいものを作れる可能性があるんじゃないか」と考えた。シャツを分解してみると、そのパーツはジャケットよりも多くて20パーツ以上。その複雑さは、シャツ作りの面白さに拍車をかけた。
 モリカゲシャツのブランドは、月に一度新作が発表される「オモテモリカゲシャツ」をはじめ、工程などを極力省き、普段は廃棄される生地の“耳”などを使ってデザイン性をもたせた「ウラモリカゲシャツ」など4つのブランドから構成される。もちろんオーダーもあり、こちらは受け付けてからできあがるまで4カ月ほどかかるそうだが、ぴったりの1枚を待つのなら、楽しい時間でもある。
 染め変え券つきの白シャツ、ハギレで作るブローチやくるみボタン、仕入れたけれど余ってしまった生地で作ったストール。さらには、不良品を柿渋や藍で染めてバッグなどに作り替えるなど、さまざまな再生プロジェクトにも挑戦する。
 「染め変えは日本人の知恵。そんな当たり前のことを大切にしたい」と森蔭さんはいう。また、物作りの技術を次世代に継承するためにも、日本製であることが大切と考え、あくまでもメードインジャパンにこだわる。本家本元のアメリカやヨーロッパの人たちに着てもらう日も、そう遠くはないかもしれない。(木村郁子)
◆モリカゲシャツ キョウト 京都市上京区河原町通丸太町上る桝屋町362の1、(電)075・241・7746、HP(http://www.mrkgs.com/)。東京でも期間限定ショップをオープンしており、今年は3月19~21日、浅草のライオンビルディングで。

タイトルとURLをコピーしました