<過去30年の50万曲を数学的に解析すると、75%の精度でヒットするかどうかを予測することができた>
テイラー・スウィフトはヒット曲の作り方を熟知している。「シェイク・イット・オフ」のミュージックビデオでも、「私の中から音楽が聞こえてくる/これでいいんだよ、って」と歌いながら軽快に踊る。
売れそうなメロディーが誰にでも空から降ってくるとはいかないが、ヒットの法則というものがあるのだろうか。カリフォルニア大学アーバイン校の研究チームは数十万曲を数学的に解析し、英王立協会のオープン・サイエンス誌に論文を発表した。
「私のティーンエージの娘が聴いている曲は、私が同じ年頃に聴いていた曲とかなり違う」と、論文の共同執筆者でライフサイエンスが専門の数学者ナタリア・コマロバ教授は言う。「音楽は明らかに進化している」
コマロバたちは85~2015年の30年間にイギリスでリリースされた50万曲のデータベースを分析。シングルチャートのトップ100に入ったものを「成功」したヒット曲と定義した。
最も顕著な特徴の1つは、踊りやすい曲だ。例えば14年にリリースされたヒット曲は、スウィフトの「シェイク・イット・オフ」のほか、シーアの「シャンデリア」やメーガン・トレイナーの「オール・アバウト・ザット・ベース」もダンスにぴったり。ほかにも幸せな曲、エレクトロニック音楽、インストゥルメンタル、男性ボーカルなどの特徴がみられる。
ただし、論文は残念な傾向も指摘する。この30年間で「幸せな曲」「明るい曲」は減り、「悲しい曲」が増えているのだ。さらに、男性が歌うヒット曲も減っている。
「(売れる音楽と売れない音楽は)まるで生物学的に異なる種のようだ」と、コマロバは言う。
この数学的な発見は、ヒットの法則につながるのだろうか。コマロバたちは音楽的な特徴をアルゴリズムに取り入れて機械学習を用いたところ、75%の精度でヒットするかどうかを予測することができた。
音楽を純粋に愛する人にはうれしい話だろう。ヒットするかどうかはアーティストの名前や大金をつぎ込んだマーケティングだけでなく、大部分が音楽的な特徴で決まっていたからだ。
「とても前向きな発見だ」と、コマロバは言う。「肝心なのは音楽そのものだ」