中古車販売大手ビッグモーターの闇が膨れ上がるばかりだ。自動車保険の保険金不正請求に街路樹問題だけでなく、保険の架空契約疑惑や営業の詐欺的手法も告発され始めた。新経営陣は「企業風土改革」を掲げて、再建に乗り出しているが、今後、同社にはいくつもの試練が待ち受けている。
金融庁は先月31日、ビッグモーターに報告徴求命令を出した。車両をゴルフボールなどで故意に傷つけて、修理代を水増しする不正行為が横行し、さらに展示車や廃車予定の車に従業員が架空の保険契約を結んでいた疑惑も出ている中、問題がなかったかの調査に乗り出した。
これだけではない。ビッグモーターの元営業部長だったユーチューバーの中野優作氏が1日、実業家の堀江貴文氏のユーチューブ番組に出演し、同社が不正行為に手を染めていった背景を暴露。さらに板金・塗装部門だけでなく自身が携わった営業部門でも「詐欺っぽい売り方をしていた」と不正に近い手法が横行していたことを告発した。
次々と問題が明るみに出る中、新経営陣は「企業風土を一新することが皆さま方の信頼を取り戻す近道」と再建に意欲を見せているが、経済アナリストは「ビッグモーターの再生は、ほぼほぼ厳しい」と指摘する。
現在、同社を巡っては金融庁、国交省、消費者庁、各自治体などがメスを入れ始め、実態が判明次第、行政処分や指導が行われる運びとなる。
「保険金不正請求が確認されれば、一定期間の業務停止や保険代理店の認可も下りなくなる。不正車検となれば民間車検場の指定や工場の認証の取り消しになる。すでに同社は今回の問題で客離れが起き、売り上げが下がっている。銀行の融資も受けられなくなるどころか、むしろ回収に入ってくる。約300ある店舗の維持費や約6000人の従業員の給料も支払われなければいけない中で、資金繰りは苦しくなる」(同)
中野氏によれば、この数年でビッグモーター社員の給与は跳ね上がっており、「多い人で4000万円、だいたい2000万円以上もらっている人が多い」とノルマがきつい分、高給で締め付けていたという。相当な内部留保があるとみられるが、今後はこの固定費が負担となり、給与カットや店舗縮小となれば、社員流出は避けられないというわけだ。
また行政処分だけでなく、刑事事件化する可能性も高い。
「今回の件はあまりに悪質で、車の購入や修理、保険契約などで被害を受けた個人が集団訴訟を民事で起こせば、刑事告訴する動きも出てくる。行政処分がひと通り出るころには被害の全体像が見えてきて、罪状や損害額がハッキリすれば、警察が動くことも予想される。社長を降りた兼重宏行前社長ら経営陣らも『知らなかった』は通用せずに責任を問われることにもなってくる」(前出のアナリスト)
経営から完全に手を引いたとされる兼重前社長、宏一前副社長の親子が数年後に再び会社トップの座に返り咲く事態もささやかれているが、会社自体の存続も含めて、厳しい現実に直面することになりそうだ。