【インタビュー】英国出身のブロードキャスター、ピーター・バラカン(73)が監修する音楽フェスティバル「LIVE MAGIC!FINALE」が19日に東京・恵比寿ガーデンプレイスのザ・ガーデンホールとザ・ガーデンルームで行われる。自身が紹介したいアーティストを招いて2014年から開催し、音楽ファンから熱い支持を得ていたフェス。今年で10周年の節目を迎え、今回でいったん幕を下ろすことになった。惜しまれる中での決断、そして今後の活動について聞いてみた。(鈴木 美香)
「フェスは知らない音楽に出会う場。だからこそ、“旬”をお届けしたいという気持ちが強かった。地理的にもジャンル的にもバラバラ。よく言えば多様性があるフェスでした。僕がいいと思って聞いてもらいたいアーティストを予算とにらめっこして招待していました」
バラカンの深い知識と幅広い人脈で、ここでしか一堂に会することのない、音楽性の高い、ファンには恒例行事的なイベントとなっていた。だが、10年の節目にいったん休止。
「今の円安はもう致命的な打撃です。。半分ぐらいが海外からのアーティスト、半分が日本のアーティストというバランスで来て、うまくいったり、ちょっと赤字になったり、いろいろ繰り返してきたんですけど。この形で続けていくことは難しいです。日本の洋楽人口が減ってきているということもあります」
ファイナルとなる今回の“ヘッドライナー”は、英国出身のスピリチュアル・ジャズのリーダー的存在でトランペット奏者マシュー・ハルソールに決めた。「普段はグループは予算の関係で呼ばないのですが、今回は最後ということでハーブやパーカッションを含めた7人編成でどうしても呼びたくて呼びました。優しいグルーブ、メロディーがあって、聞いていてとにかく気持ちがいい。去年出たアルバムがすごく良くて去年の最後の3カ月はこればっかり聴いていたほどです。呼ぶことができてとてもうれしいです」
ほかにも大阪発のファンクバンド「オーサカ=モノレール」、シシド・カフカが主宰し、100種類以上のハンドサインをメンバーに出して即興でリズムを奏でるリズムプロジェクト「el tempo(エル・テンポ)」、スコットランドの3人組フォーク・グループ「Lau(ラウー)」、日本の音楽バンド「民謡クルセイダーズ」のボーカル・フレディ塚本率いる民謡グループ「こでらんに~」とエチオピアの「Moseb Band」が展開してきた国際交流プロジェクト「民謡交換プロジェクト」、インドネシアのネオ・ソウル・バンド「Thee Marloes(ジ・マーローズ)」、奄美大島出身の里アンナの三味線と竪琴にドラマーの佐々木俊之の異色デュオ、米国出身の19歳でアパラチア風のバンジョーを弾いて歌うノーラ・ブラウン、和歌山出身のギタリスト濱口祐自、長野県を中心に活動するギタリスト、ジロー・ヤマオカという個性的な10組が出演する。
「今年も同じようにいい意味でバラバラ。全員面白い人ばかりです」。今年も自信を持ってのラインナップとなった。ここでしか出会えない機会を惜しむ声は尽きない。今後はどうなるのか。
「形を変えて無理のない規模でやりたいと思います。必要だったらクラウドファンディングすることもあるかもしれないし、その都度無理なく楽しくできるコンサートを続けていこうと思います。例えば僕が呼ばないと誰も呼ばないようなちょっと大きいアーティストをコンサートの形で呼べたらいいなという希望も少しあります。形を変えて皆さんとまた出会える、間違いなく、そう思っています」
これからもファンを喜ばせてくれそうだ。
○…11日からはバラカンが選んだ音楽映画フェスティバル「Music Film Festival in Shinjuku」が東京・新宿のシネマート新宿で24日まで開催されている。「日本では知られていないミュージシャンの話が多いものだから、少しでも人に知っていただくとうれしい。最近、こういった音楽関係の映画が次々と作られているんですよ。面白いものが多くて、これを紹介しない手はないなと思っています」。知らない音楽を伝えたいという情熱はより一層高まっているようだ。