少子高齢化や景気低迷で需要の縮小に苦しむファミリーレストランが、高齢者の取り込みに躍起になっている。目玉の一つが朝食メニューの強化。ロイヤルホールディングス(HD)が展開する「ロイヤルホスト」は約10年ぶりの刷新に踏み切り、すかいらーくも「ガスト」の商品を拡充した。出勤前のサラリーマンやOLだけでなく、退職した60代以降のシニア層に「居場所」を提供し、常連客になってもらう狙いもある。
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平日の朝7時過ぎ、横浜市内のガストはモーニングメニューを目当てにした客で席が埋まっていた。目立つのはシニア層の人たち。新聞に目をやりながらトーストやコーヒーを味わい、ゆったりと過ごしている。
団塊の世代に当たる1947年生まれが5年前に60歳の定年を迎え、さらに65歳の今年で定年延長を終えることもあり、朝食の時間帯にシニア層が増えているという。このため15日にメニューを一新。年金生活となって節約意識が高まることを意識して、トーストやピザと飲み物などを組み合わせながら299円、399円と低価格に抑えたセットを新たに導入した。
ロイヤルホストも6日、新たな朝食メニューの提供を始めた。売り物の「エッグベネディクト」はイングリッシュマフィンに卵やホウレンソウを乗せ、飲み物付きで735円。朝の時間帯に余裕のあるシニア層にくつろいでもらうため「家庭では作れないぜいたく感を重視した」(商品企画部の橋本哲也部長)という。品数も11点から13点に拡充し、1店につき1日当たり10人の来店者増を狙う。
九州が地盤の「ジョイフル」は、和風を好むシニア層向けに「幕の内朝食」(499円)を1月に追加。セブン&アイ・ホールディングス傘下の「デニーズ」も、量が少なめで健康に配慮した朝食を検討している。
調査会社の富士経済によると、ファミリーレストランの市場規模は1兆5841億円だった2006年を近年のピークに減り続け、12年は06年比で約14%減の1兆3628億円になる見通し。各社は朝食メニューの充実を通じ、需要の底上げを図りたい考えだ。(金谷かおり)