深夜2時。東京都府中市にあるロイヤルホスト府中東店では、約30卓あるテーブル席に客がわずか2組しかおらず、店内は静まり返っていた。
ここは大手ファミリーレストランチェーンである「ロイヤルホスト」の店舗の中で、唯一24時間営業を継続している。しかし、1月末で深夜営業を終了する予定。これにてロイヤルホストは全223店舗が24時間営業の幕を閉じる。
24時間営業を廃止、あるいは縮小しているのはロイヤルホストだけではない。「ガスト」や「ジョナサン」などの大手チェーンを持つすかいらーくは昨年12月、987店舗のうち約8割に上る750店舗の深夜営業の見直しを行い、310店舗の深夜営業廃止の決定を発表している。
なぜ、ファミレスが24時間営業を見直しているのか。理由は二つある。一つは、単純に客が集まらなくなったからだ。
自動車が一般家庭に急速に普及した1970年代当時、深夜のファミレスは、「車で若者が集まるコミュニケーションの場だった」と佐々木徳久・ロイヤルホスト社長。深夜に集まれる場所が少ないため、店を開けていれば客が来る“ドル箱”の時間帯だったのだ。
この常識を壊したのが携帯電話だった。2000年ごろからの普及でコミュニケーションの「場所」を提供する必要性が薄れ、客足が鈍って深夜帯はじり貧に。それでも「24時間、食事を提供するという社会的責任から、廃止には踏み切らなかった」(業界関係者)。
● 深夜の食は牛丼へ
これに追い打ちをかけたのが10年ごろから顕在化した人手不足だ。ファミレスの場合、ドリンクバーの利用が多い深夜帯でも調理要員など頭数が必要。アルバイトを集めるには時給アップが必要で、赤字は膨らむ。さりとて、深夜を正社員で賄えば過重な長時間労働につながる。これが二つ目の理由だ。
客も来なければスタッフも集まらない。まさに八方ふさがりで、深夜は閉めざるを得ないのだ。「ファミレスが果たす役割は変わった。今後はあらためて“食事”の場としてサービスを見直し、ランチやディナーの時間に人員を増やす」と佐々木社長は言う。
ファミレスに代わって深夜の食の提供を担っているのが牛丼チェーンだ。牛丼チェーンの強みは少人数オペレーションによる人件費の低さで、「米や肉の廃棄ロスを考えると多少の赤字なら店を開けている方が採算的にまし」(牛丼チェーン関係者)。
14年に最大手「すき家」の1人オペレーション問題が表面化したが、一時は約6割の店舗で廃止した深夜営業も、16年末時点で廃止1割以下にまで戻っている。
とはいえ、人手不足の波は同様に押し寄せる。24時間営業継続の次なる焦点は、牛丼チェーンが人件費高騰にどこまで耐えられるかに移っていく。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 泉 秀一)