11月25日、フジテレビが希望退職者を募ることを発表した。勤続10年以上、満50歳以上の社員が対象で、退職金には特別優遇加算金が支給される。希望者には再就職支援もおこなわれる。フジテレビが希望退職者の募集をかけるのは、2017年以来だという。 しかし、希望退職者を募集している企業はフジテレビだけではない。東京商工リサーチによれば、2021年1~10月、上場企業で実施したのは72社。 そのうち、1000人以上となるのは、「日本たばこ産業」2950人、「本田技研工業」約2000人、「KNT-CTホールディングス(近鉄グループの旅行企業)」1376人、「LIXIL(トイレや建材を販売)」1200人、「パナソニック」約1000人の5社にのぼる。これは、金融危機が起きた2001年の6社以来の高い数字だ。 詳細が公表されていない企業も多いが、たとえばLIXILでは、40歳以上かつ勤続10年以上の正社員が対象になっている。オリンパスでは、40歳以上かつ勤続3年以上の正社員など950人が対象。調査を見る限り、40歳以上が対象となるケースが多い。 今後、募集が増える傾向は続くのだろうか。東京商工リサーチの担当者に話を聞いた。 「『増える』と断言はできないものの、現在、大企業が大型募集をかけやすい状況にあるのは事実です。コロナが少し落ち着き、人々の外出も増えて、世間の空気が上向きになりつつありますから。 去年のように、飲食や小売り、観光などの雇用がコロナ禍で失われるなか、名の知れた企業があまり大きな募集をかけるのは悪目立ちしてしまう。実際、2020年の大型募集は2社のみでした。 もともと経営計画に盛り込んでいたような企業も、コロナの影響が深刻な状況下では、なかなか予定どおりの実施もむずかしかったはず。日常が戻りつつある今、先送りしていた企業も、そろそろ動き出すタイミングです」 「大企業だから」と安心していられない現実もある。中小企業による300人以下の募集は「業績悪化」が理由であることが多いが、大企業の大型募集はそうとも限らない。 「大型募集をかけた5社のうち、4社は黒字です。今回募集をかけているLIXILも、過去に赤字・黒字両方の年で実施していました。大型募集になると、業績に関係なく、『業務の効率化』や『中長期での経営見直し』として、全社的におこなわれるパターンが多いんです」(前出・担当者) 加速傾向にある企業の人切りで、「終身雇用」の時代は終わりつつある。40代以上の会社員にとっての地獄は、もうすでに始まっている。