ブックオフが「中古スマホ」を買い取る理由

新宿駅西口近くのブックオフ。800台以上の中古スマホがずらりと並ぶフロアに、帰宅途中の会社員が続々と集まってくる。客層の中心は30~40代の男性。2012年に発売されたアイフォーン5やそれ以前の機種など、3万円を下回る手頃な価格の端末が人気だ。

大手携帯会社が下取りを強化する一方で、中古品販売大手のブックオフコーポレーションやDVDレンタル大手のゲオホールディングス、パソコン販売大手でビックカメラ傘下のソフマップなどは、国内中古市場の開拓に力を入れている。

現在、ブックオフは約800店、ゲオは約1000店で中古スマホを取り扱う。全国36店あるソフマップでも大半の店で取り扱い、ビックカメラの店舗に設け た専用カウンターでも買い取りを実施。各社とも、店頭で販売するスマホは基本的にユーザーから買い取ったものだ。ブックオフの場合、携帯電話の買い取り台 数は2014年度で35万台になる見通し。

いずれも、買い 手は通信に詳しい20代後半から40代の男性が中心だ。また、外国人客のウエイトも非常に高い。「都心部では(外国人が)客の3割を占める店舗もある」 (ゲオ情報管理部)。「新宿西口駅前店の場合、売り上げの半分が外国人向け」(ブックオフ事業開発部の青木亨氏)。「10台、20台とまとめて買っていく ケースもある」(ソフマップ秋葉原本館)。

中古品の買い手 には特徴が見られる一方で、端末の売却には比較的幅広い層のユーザーが訪れるようだ。ソフマップの場合、「20代前半から年配の方まで来店する。発売して 間もない機種を売るユーザーもいるが、2~3人の友人同士や家族連れで来店するケースも多い」(秋葉原買取センターの加瀬弘充氏)という。

各社が個人ユーザーからの買取に力を入れる中、ブックオフは今年2月、端末の買い取りと組み合わせた新たなサービスを打ち出した。07年以降に製造された端末を下取りに出せば、新品のSIMフリースマホ(台湾エイサー製)をゼロ円で販売するという仕組みだ。

現在、同社で中古端末を購入するのは、MVNO(通信会社から通信網を借りてサービスを提供する業者)の安価なサービスと中古端末を組み合わせて利用する、通信に詳しいユーザーだ。

一方、大半のユーザーは大手携帯会社と契約して、新規種に乗り換え続けているため、中古品とは無縁だ。だが、市場の裾野を広げるためには、こうしたユー ザーとの接点をいかに増やせるかが今後のポイントになってくる。そのため、新しいサービスでは店頭に中古スマホを持ち込めることや、通信サービスと端末を 組み合わせて安く使える点をアピールする必要があった。

今回はデータ通信サービスと新品スマホを組み合わせて提供するものの、「いずれ中古品を使ってもらうことで、スマホの多くが再利用されるサイクルを作っていきたい」(事業開発部長の土橋武氏)というのがブックオフの真の狙いだ。

目下、中古業者が注目するのはSIMロック解除の義務化だ。SIMロックとは、通信事業者が他社の通信網で使えないように制限するもの。総務省は5月以降に発売される端末について、この解除を義務化する方針を打ち出している。

ロックの解除によって、ユーザーは通信サービスを自由に選べるようになるため、安さがウリのMVNOのサービスが一段と伸びる可能性がある。また、安さが武器の中古スマホも注目されるだろう。

ユーザーが自由に通信サービスを選ぶようになると、大手携帯会社は顧客を囲い込むことが難しくなる。すると、長期契約を前提とした端末の販売奨励金が減り、新品の値上げにつながるといった見方もある。そうなれば中古の割安感が注目され、販売拡大の追い風になりうる。

MM総研によれば、国内の中古スマホ市場は13年度の141万台から18年度は326万台に拡大する見込み。同社の篠﨑忠征氏は「量販店では3万円以下の SIMフリー端末が人気で、MVNOのサービスと共に使われている。今後はより安い中古端末も徐々に意識されるようになる」と分析する。

まだ始まったばかりの国内中古スマホ市場だが、普及に向けた条件は着実に揃いつつある。絶大なシェアを握る大手携帯会社としても、決して無視できない存在になりそうだ。

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