4月1日に発表された新元号「令和」。平成もあと1か月足らずで終わりを迎えるわけですが、あえてこの時期に苦しかった平成の元凶をあぶり出し、新時代には新しい価値観を登場させるべきであるとするのは、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さん。北野さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、その新価値観の具体例を記しています。
平成は、どんな時代だった?
新元号が発表されましたね。それで、平成が終わるのは1か月後だそうです。いよいよ、平成の終わりが近づいてきました。皆さんにとって、平成はどんな時代でしたか?
私は、平成時代、ほとんど日本にいませんでした。1990年、つまり平成2年、モスクワに留学した。大学を卒業し、そのままモスクワに住みつづけていた。そして、2018年、つまり平成30年11月、日本に戻りました。つまり、平成時代、私が日本にいたのは、平成元年と平成最後の年である31年だけということになります。
私がモスクワに留学した1990(平成2)年は、バブルが崩壊した年でもあります。それでも、当時日本は、まさに「黄金の国ジパング」と思われていました。ロシアの教授にも、時々いわれました。「共産主義の理想、万人平等で皆豊かは、ソ連では実現できなかったが日本で実現された!」と。そう、当時は90%以上の人が、「私は中産階級だ」と思っていたのですね。GDPも、一人当たりGDPも世界2位でした。
ところが、バブル崩壊の影響は、思ったよりも長引いた。「暗黒の10年」になり、「暗黒の20年」になり…。小泉さんの時代、安倍さんの時代は、比較的景気がよかったといわれています(安倍さんの時代は、まだつづいていますが)。しかし、一人当たりGDPは、下がりつづけ、今ではなんと世界25位になっています。アジアでもトップではなく、シンガポール、香港より下になっている。これ、悲しいことではあります。
しかし、「日本は、1950~1990年まで成長期だった。1990(平成2)年からは成熟期に入ったのだから、仕方ない」ともいえます。
昭和の価値観が崩壊し、新しい価値観が登場しない
1950~1990年、日本は成長期でした。それをけん引したのが、「会社教」。「会社教」は、2つの「現世利益」を、国民に提供しました。1つ目は、「年功序列」。年と共に、役職も給料も上がっていくのです。2つ目は、「終身雇用」。リストラされない。学校を卒業して入った会社で、定年まで働くことができる。この2つの「現世利益」に支えられた「会社教」が日本経済を復活させました。
ところが、2000(平成12)年ごろになると、企業はもう「2つの現世利益」を維持することができなくなった。そんな時、ちょうどカルロス・ゴーンさんが日産のトップになり、「大リストラ」を断行。それで、日産を「V字回復」させることに成功した。これで、「リストラ解禁!」とばかりに、日本の経営者もどんどんリストラをするようになった。
会社は、もはや2つの現世利益を提供できない。そう、これで日本経済を支えてきた「会社教」は死んだのです。しかし、死んだのに、誰も「会社教は死んだ」といわない。それで、国民は、「年功序列もない」「いつリストラされるかわからない」状態で、「労働環境は、会社教時代のまま」働かされることになった。それで、日本は「ブラック企業国家」になってしまった。
- 過労死、過労自殺
- 未婚化(結婚相手を見つける時間がない)
- 晩婚化(結婚相手を見つける時間がない)
- 少子化(子供を産み育てる時間がない)
- 孤独死(年取った親の世話をする時間がない)
- 児童虐待(忙しすぎて、親に子供を愛する余裕がない)
- 子供成人病の増加(親が忙しすぎて、まともなものを食べさせることができない)
などなど。これらは、「年功序列」「終身雇用」なしで、過酷な労働を強いられた結果です。そう、平成時代、会社教は滅びていった。しかし、「新しい価値観」は、いまだに生まれていないのです。
新しい時代には、新しい価値観を
そこで私は去年の12月、「会社教」にかわる「新しい価値観」を提案しました。
「家族大切主義」です。
「家族主義」「家族ファースト」「家族第一主義」ではありません。「家族大切主義」です。
これ、ただのスローガンではなく超具体的な提言もしています。たとえば、「真の働き方改革」。実をいうと、日本より労働時間が【短い】国の方が、一人当たりGDPは【高い】のです。たとえば、「世界一勤勉」と思われているドイツ人。年間労働時間は1,356時間。「労働時間短いランキング」で堂々世界一になっています。
この国の一人当たりGDPは世界19位。日本より6つもランクが上です。詳しくは本を読んでいただきたいと思いますが、労働時間短いランキングトップ10で、日本より一人当たりGDPが低い国は一国もありません。つまり、「労働時間が【短い】方が、一人当たりGDPは【高い】のです。日本には、「労働時間を短くすれば、日本経済はさらに沈む」という人がいまだにいます。これ、「大うそ」です。
他には、人が東京圏から地方に移住したくなる方策。すべての子供が、栄養たっぷりの食事をできる仕組み。農村を大復興させる方法。少子化問題を解決する「超具体的」な方法。などなど。
日本の価値観は、さまざま変転してきました。江戸時代、庶民は、「幕府は天地のごとく盤石」と信じていた。明治時代から敗戦まで、国民は「天皇陛下は、現人神。天皇陛下について行けば間違いない!」と信じてきた。敗戦後は、「会社教」を信じてきた。
今、国民は、会社教に裏切られ、信じる価値観がなくなり漂流しています。平成が終わり、新しい時代がはじまろうとしている今、新しい中心的価値が必要。それは、「家族大切主義」だろうと、私は思います。幸い、読んでくださった方の評判はいいようです。
議員さんの後援会に入っている方は、応援している政治家さんに、「日本の生き筋」を贈ったそうです。またある大学の研究室では、30冊本を買って、学生たちに学ばせているとか。こんな感じの報告を、しょっちゅう受け取っています。
平成が終わり、新しい時代がはじまろうとしています。新しい時代には、新しい中心的価値観を。新しい時代は、「日本復活の時代」にしましょう!