ブルゾンちえみ、上半期の“主役”はほぼ当確か? パロディ芸の系譜を継ぐ新星

今年に入り急激に露出が増え、各バラエティ番組で確かな爪あとを残しているのが女性芸人・ブルゾンちえみだ。1月放送の『ぐるナイ! SP』(日本テレビ系)で優勝して以来、“デキる女”になりきり恋愛についてアドバイスするネタが瞬く間に浸透。どこか古くさい名前だが、本人が「尊敬するコシノジュンコ氏を意識している」と語るように、そのメイクやルックスは毒を持つ爬虫類のごとき強烈なインパクトを放つ。芸歴2年の超若手が、なぜこれほどまでに各番組に“ハマる”のだろうか?

【2016年ブレイク芸人ランキング】今年はブルゾンちえみもランクイン確実か?

◆インパクト大な外見で、デキる女風の恋愛アドバイスが“じわる”

きっかけは今年の『ぐるぐるナインティナイン』の正月特番「ぐるナイおもしろ荘2017」だった。同企画はこれまでにもおかずクラブや日本エレキテル連合ら、多くの注目芸人が出演し、軒並みブレイクを果たした登竜門的な番組だ。今回、オーディション参加数が過去最高となる859組の中、ブルゾンちえみは「ブルゾンちえみ With B」として出演し、見事優勝。SNSでも「ブルゾンちえみ、じわる」などと話題になった。

芸風としては、キャリアウーマンやデザイナー、女性外科医などの“デキる女”になりきり、上から目線で恋愛についてアドバイスするというネタで、後ろに従えたイケメン風の男性ふたりと音楽にノリながらセクシーポーズをとり、決めゼリフを放っていく。ガッツリ引いた黒いアイラインに真っ赤なルージュ、ハウスマヌカン風の前髪パッツンというルックスは、確かに1980年代のコシノジュンコ的でもあり、「DESIRE」を歌う激太りした中森明菜的でもある。タイトなスカートにボディラインを強調したブラウスを着ているのだが、その豊満すぎるスタイルのためパツパツ……。しかし、そこを突っ込むのは野暮とばかり、本人はいたって“本気”でネタをかましてくるので、視聴者もつい納得しながら笑ってしまうのである。

◆“嫌味にならない恋愛ネタ”のバランス感覚 昨今必須のフリートークも良

一連のネタの“お供”をする2人の男「With“B”」の正体は、同じ事務所に所属する後輩のお笑いコンビ・ブリリアン。言ってみれば、叶姉妹の“グッドルッキングガイ”的なポジションで、ブルゾンちえみが指を鳴らすと「スカイ!」「オーシャン!」「(ふたり合わせて)With“B”!」と忠誠を尽し、ムーディな音楽で3人がセクシーポーズをとるノリは、かつての「J MEN’S TOKYO」(東京・六本木で人気を博した鍛えぬかれた外人ダンサー達が踊っているお店)を彷彿とさせる。実際、ブルゾンちえみのオフィシャルブログ『ブルゾンちえみ~What`s up?セレブリティーズ~』では、叶姉妹がブログ等で多用する“ファビュラス”(現実離れしているほど素晴らしいの意)を使うあたり、大いに叶姉妹を意識しているようである。

ただ、このWith“B”は意外と汎用性が高く、2月11日放送の『嵐にしやがれ』(同系)では、「芸人とばかり遊んでいる」と嵐のメンバーに揶揄された二宮和也による不意の指鳴らしにも即座に反応し、「意外と鍛えられるてるなぁ」と感心された。またそのバリエーションとして、二宮と外人美女のWith“G”(Gはガールズ)バージョンや、二宮率いるWith“B”バージョンも披露されるなど、しっかりと笑いを取っていた。肝心のブルゾンは、厨房がネパール人だらけのファストフード店でバイトしていた際のエピソードとして、「付き合った彼氏は3人連続でネパール人。色が白くてふくよかなのがドンピシャらしくて…」と告白。最近の女芸人にとっては“必須”とも言える“嫌味にならない恋愛ネタ”を披露し、必須となるフリートークにおいても“合格点”を取ったのである。

◆女ピン芸人に脈々と受け継がれる“パロディ芸”をさらに鋭角化

先月22日の『行列のできる法律相談所』(同系)で、「今年ブレイクするかもしれない芸人」枠でもネタを披露して注目を集めたブルゾンちえみだが、2月12日放送の同番組では早くもひな壇ゲストとして再登場。今月に入り『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「若手芸人持ち込み企画プレゼン大会」や『スッキリ!!』(日本テレビ系)、『PON!』(同系)などのほか、新ネタを「おもしろ荘」でテレビ初公開するなど、次々と番組出演し一挙にブレイクした。この勢いに乗って4月以降はさらにレギュラー番組などへの出演が増えるであろう。しかし、当のブルゾンちえみはブログで、「おもしろ荘、ありがとうございました。Twitterでのたくさんの嬉しいリプ、本当に、ありがとうございます。1つずつ読んでいるのですが、返信できずにおります。申し訳ありません。ただ、凄く、励みになっております」と、どこまでも殊勝に感謝の意を述べるあたりも、好印象につながっているようだ。

ピンの女芸人と言えば、1980年代の清水ミチコにはじまり、渡辺直美やキンタロー。に至るモノマネ・顔マネ系で、人気歌手やアイドルをデフォルメして面白がったり、潔く体を張った芸が主流だった。しかし2000年代に入り、友近から柳原加奈子、横澤夏子らが登場し、ひとりコントによってキャリアウーマンや女医、教師、主婦、妊婦など、普通にいる女性たちのパロディ芸に人気が集まるようになる。そして昨年、平野ノラがバブリーなOLネタでブレイクし、今年は恋愛アドバイザーのブルゾンちえみというわけだ。今後、ブルゾンはそうした先輩ピン芸人たちの仲間入りを果たし、一般視聴者が当人にはなかなか指摘できない“痛い女”や“ウザい女”を次々とネタ=描写して、楽しませてくれることだろう。

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