ブーム後退マリトッツォ、人気底堅いピスタチオとの違いが判明

 日経トレンディ「ヒット商品ベスト30」で2021年の6位にランクインしたマリトッツォは、21年下期にはブームが退潮していた。これと対照的なのが、爆発力はないものの安定した人気を維持しているピスタチオだ。両者の差はどこにあるのか? ネットユーザーの検索動向から考察する。 【関連画像】「マリトッツォ」と「ピスタチオ」の検索者数の推移  日経トレンディの恒例企画「ヒット商品ベスト30」で2021年の6位にランクインした「マリトッツォ」。ブリオッシュなどのパンにたっぷりの生クリームを挟んだイタリア発祥の伝統的な洋菓子が、21年一躍大ヒットした。だが、人々の興味関心度合いを如実に反映する検索者数に着目すると、マリトッツォ人気は21年上半期がピーク。下半期には下り坂に入っていた。  比較対象として、話題性でマリトッツォほどの爆発力はなかったものの、以前から安定した人気でスイーツ商品が展開されていた「ピスタチオ」の検索者数をグラフ化してみた。分析には、毎月更新される行動データを用いて、競合サイト分析やトレンド調査ができるヴァリューズ(東京・港)のWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を使用した。  マリトッツォはほとんど無名だった21年1月から半年足らずで急速に認知され、入力しづらい文字列にもかかわらず21年6月には検索者数が40万人(推計、以下同)を超えた。しかしながら翌7月から検索者数は下降に転じ、一度も前月を上回ることなく22年2月には5万5000人にまで減少している。これは21年3月の7万8200人を下回る規模だ。  一方のピスタチオは、21年1月時点で10万人超の検索があった。その後、ピスタチオを用いたスイーツなどが話題になった際に検索者数が増えるといったアップダウンを経て、22年2月の検索者数は13万人と、微増で推移している。  マリトッツォとピスタチオ、何が違うのか? 検索者の性別を調べると、マリトッツォは女性比が68.5%に対し、ピスタチオは同70.9%。また年代別に見ると、ピスタチオは検索者に占める20代の比率がマリトッツォよりやや高く、反対にマリトッツォは検索者に占める40~50代の比率がピスタチオのそれを上回る結果だった(21年1月~22年3月)。少々の違いはあるが、ブーム収束と安定した人気の差を示すような材料はない。  そこで、検索時の掛け合わせワードを可視化する「ワードネットワーク」を見ると、マリトッツォ側に気になるワードがあった。

ブーム後退の「理由」が検索ワードに?

 マリトッツォとよく掛け合わせ検索されるワードに、マリトッツォ商品を販売している「カルディ」「セブンイレブン」「ヤマザキ」、そして作り方を調べる「レシピ」などがある。さらに3語以上の場合は、例えばマリトッツォ×レシピに続いて「簡単」や「本場」などのワードが検索されている。  注目は、セブンイレブン、カルディ、ヤマザキで登場する「カロリー」だ。ヤマザキの商品でも、販売店がセブンイレブンでもカルディでも、気になっているのはカロリーなのだ。はみ出さんばかりのたっぷりクリームが魅力のマリトッツォだが、果たしてブームだからと食べ続けてよいものか? そんな不安心理が検索ワードに表れている。実際にカロリーを調べ、少なからぬ人が“マリトッツォ離れ”を起こした可能性が考えられる。  その点、ピスタチオはビタミンB6を豊富に含むナッツであり、美容・健康効果について説明するWebページが多数ある。ピスタチオ検索からの流入ページで最も多いのは、ナッツメーカーの有馬芳香堂のサイト内にある「ピスタチオの効果・効能とは? 美容や健康効果を最大化する食べ方も紹介!」という記事だった。  ピスタチオは、コメダ珈琲店が21年10月1日から「シロノワール ぜいたくピスタチオ」を、モスバーガーが22年1月末から「まぜるシェイク ピスタチオ」を、森永乳業がアイスクリーム「ピノ」「PARM(パルム)」でピスタチオアイスを発売するなど、期間限定や数量限定でさまざまな商品が企画されている。スイーツ化すればそれなりにカロリーはあるのだが、「ナッツの女王」とも称される栄養価の高さが免罪符になっているのだろう。既存商品をピスタチオテイストで商品化しやすい面もあり、息の長い人気になっている。  思えば、18から19年にかけて一大ブームを巻き起こしたタピオカミルクティーも、カロリーの高さが泣きどころで、19年夏をピークにブームが退潮した。一過性のブームで終わらせずに高いレベルで人気を安定させるには、ピスタチオのように健康イメージの高い食材を用いるのが一つの方法かもしれない。

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