“プチセレブ”に照準 百貨店、VIPルームで囲い込み

百貨店各社が、個人消費の主役として存在感を増している“プチセレブ”の囲い込みに乗り出している。店内のVIPルームを従来の外商部門が担当する大口顧客だけでなく、一定の固定客にも開放。幅広い消費者層の“ご贔屓(ひいき)”を開拓していこうという戦略だ。

 ◆松屋銀座は新設

 松屋銀座(東京都中央区)は4月25日にVIPルームを新設する予定。新宿タカシマヤ(同渋谷区)も4月19日の全面改装オープンに先駆け、今月1日にVIPルームをリニューアルした。

 従来の百貨店のVIPルームは、専門の担当者当者が付き、1000万単位の買い物をするような一部の富裕層が来店した際の利用が中心だった。

 これに対し、松屋のVIPルームは、年間100万円以上の買い物をした同社のクレジットカード会員あんども対象とする方針。休憩用と売り場から好みの商品を取り寄せ試着ができるフィッティングルームの2部屋を設ける。これまで、外商顧客を対象とした窓口はあったが、VIPルームはなかった。

 ゆったりとくつろげる空間を提供することで、40~50代の仕事を持つキャリア女性や主婦ら消費意欲が旺盛な顧客層を取り込むのが狙いだ。同社では、「上質なサービスを追加することで、来店客の囲い込みにつながれば」(広報室)と期待している。

 新宿タカシマヤの「メンバーズサロン」は、これまで年間購入額100万円以上のカード会員と外商顧客が対象だったが、年会費1万500円の「タカシマヤカード《ゴールド》」の会員になれば、年間購入額に関係なく利用できるようにした。

 サロンは、席数を従来の2倍以上に増やし、パソコンや雑誌を配置。飲み物やクロークサービスなども提供しており、リニューアルにより、利用者は30~40代を中心に前年比で70%も増えたという。

 同店は若者をメーンターゲットとしてきたが、4月全面リニューアルを機に団塊の世代などの富裕層にターゲットを広げ、主に日本橋本店が担当していた外商営業も強化する方針。「門戸を広げて全体のボトムアップを図りたい」(同店広報担当者)と、意気込んでいる。

 シブヤ西武(渋谷区)でも、今月2日の全館改装に合わせて、年間購入額が100万円以上のカード会員を対象とした「プラチナサロン」をリニューアルした。

 面積を大きく広げ、入口からから内部が見えない構造にするなどサロンを充実させ、固定客の囲い込みをさらに強化していく考えだ。

 ◆団塊世代も視野

 少子高齢化の影響や郊外型ショッピングセンター、専門店など他業態との競争激化で、売り上げの縮小が続く百貨店業界では、キャリア女性や主婦を中心とした“プチセレブ”のほか、今後の消費の主役と期待される団塊の世代の囲い込みが急務の課題となっている。

 ただ、各社にとって、どこまでの顧客を「VIP」として、もてなすかが悩みの種。利用対象者拡大で従来の外商顧客が不満を持つ心配があるためだ。実際、雰囲気が変わったとの苦情があった新宿タカシマヤでは、「外商顧客向けに別のスペースも設ける必要があるかもしれない」(佐藤徳政メンバーズサロングループマネジャー)と、手探りの状態だ。

 三越や伊勢丹では、利用対象者の拡大などは検討しておらず、「従来のご贔屓様を大事にしていきたい」としている。(松岡朋枝)

コメント

タイトルとURLをコピーしました