プラごみ「国内リサイクル」揺らぐ 中国へ「横流し」禁止・罰則難しく

家庭などから出るプラスチックごみ(プラごみ)を国内でリサイクルする仕組みが揺らいでいる。リサイクルを委託された業者が、プラごみの再生品「ペレット」を高値で売れる中国へ輸出するケースが後を絶たないためだ。プラごみの分別収集には多額の税金が投入されており、環境省も“横流し”を問題視するが、業者に国内販売を義務づけるのは難しく、制度のあり方が問われている。

 「昨年6月からペレットが入ってこなくなった」とあるプラスチック加工メーカー社長は嘆く。

 制度では、市町村がプラごみを分別収集し、日本容器包装リサイクル協会(容リ協)を通して引き取ったリサイクル事業者が粒状の「ペレット」などに再生する。この加工メーカーはリサイクル事業者10社からペレットを仕入れて物流用の荷台を製造してきたが、原料調達が止まったという。

 昨年4、5月はそれぞれ155トン、117トンのペレットが納品されたが、6月は52トン、7月以降は10トン台へと激減。10~11月に至ってはゼロだった。仕入れ価格も1キロ30円超と2倍程度に。同社の工場ラインは止まったままだ。

 社長は「リサイクル事業者が中国へ輸出しているのではないか」と疑う。

 都内のあるリサイクル事業者は昨年、ペレットを中国に輸出した。この事業者によると、「横流し」を専門にする商社が中国側と仲介したという。

 容器包装リサイクル法の基本方針は「国内循環」。ごみの分別収集などのために全国の市町村が負担するコストは年間約380億円に上る。環境省の担当者は「プラごみ収集には税金が使われており、海外流出は問題だ」とするものの、ペレットはごみそのものではなく再生品であるため、輸出の禁止や罰則にまで踏み込むのは難しいという。

 一方、現場では、実際は輸出したのに、国内の加工メーカーに販売したと偽装する行為が一部で横行している可能性が高い。制度上、リサイクル事業者はペレットなどの再生品の国内販売量が大きいほど、次年度のプラごみ調達の入札で有利になるためだ。

 ある加工メーカーは以前、取引先のリサイクル事業者から頼まれ、実際はペレットを仕入れていないのに、受領を装う印鑑を書類に押し、その対価として「ハンコ代」を受け取っていたと証言する。

 中国では現在、日本製ペレットが1キロ70~80円で売れるが、ハンコ代は1キロ5円前後だという。ハンコ代と輸送コストを差し引いても、国内で売るより輸出した方が利益が大きい。

 リサイクル事業者が利益確保に血眼になる背景には委託料の低下もある。落札事業者に支払われる委託料(1トンあたり)は全国平均で平成12年度は10万9300円だったが、26年度は6万3377円まで減った。

 容リ協の担当者は「海外への横流しは望ましいことではないが、リサイクル業者と加工メーカーが結託して国内販売を装った場合、見抜くのは難しい」と話している。

 ■ペットボトルでも…市町村が直接売却

 プラごみと同様の海外への横流しは、ペットボトルでも平成20年ごろから起きていた。ペットボトルを回収した市町村が、日本容器包装リサイクル協会に引き渡さず、より高値で買い取る輸出業者などに直接売却してしまうケースが相次ぐようになったためだ。

 ペットボトルは原油に代わる繊維の材料などとして中国などで需要がある。環境省によると、ここ数年、市町村が年間に回収するペットボトル約30万トンのうち、約10万トンが登録外業者に渡っているという。

 その結果、9年度の制度開始当初は登録業者が協会から委託料を受け取っていたが、18年度からは登録業者が協会へ引き取り料を支払って落札する“マイナス入札”になった。

 仕入れコストの高騰で登録業者が倒産したケースもある一方、21年に入って世界的に景気が悪化すると、海外でペットボトルが売れなくなり、登録外業者が市町村に購入代金を支払えなくなる事例も相次いだ。

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