プロテイン人気もりもり ドリンク、ゼリー、みそ汁も… 美容目的で女性も支持

タンパク質を補い、手軽に摂取できるプロテインが注目されている。粉末タイプを中心に市場が拡大。体を鍛える人に限らず、健康や美容、高齢者の栄養補給など、利用目的も多様化する。人気の背景とタンパク質の上手な取り方を取材した。(生活文化部・片山佐和子)

多彩なプロテイン商品が並ぶ店頭。辛いスナックタイプも人気という=仙台市青葉区のマツモトキヨシ仙台クリスロード店

「生活への浸透実感」

 起床し、粉末タイプのプロテインを水に溶かして飲む。仙台市青葉区の看護師の女性(50)が5年ほど前に始めた習慣だ。「仕事が多忙で、健康維持にはタンパク質が大切だと考えた。体調はいい」。最近はココア味を好み、夏場は爽やかなグレープフルーツ味。女性は「フレーバー選びも楽しい。おいしいから続いている」とにこやかに話す。

 粉末やスティック型のバー、ドリンクにゼリー。ドラッグストア「マツモトキヨシ仙台クリスロード店」(仙台市青葉区)はプロテイン食品の品ぞろえを充実させる。健康や美容をアピールした商品やプライベートブランド「matsukiyo LAB」シリーズなどが並ぶ。

 購入者の約7割を女性が占め、中心は20~50代。飲みやすいゼリーは60、70代の女性に人気という。「粉末タイプは体を鍛える男性向けの印象があるかもしれないが、最近は女性向けの販売が伸びている」と稲村健太郎店長(40)。「間食に向くバーも好調で、プロテインの生活への浸透を実感する」と話す。

「コロナ太り解消」も後押し

 調査会社の富士経済(東京)によると、タンパク質の補給食品の国内市場は2011年に558億円だったが、運動をする人を中心に需要が増加。21年は4倍近い2216億円を見込む。「コロナ太り解消」の動きも後押しし、26年には3218億円まで伸びると予測する。

 プロテインの製造販売を6年前に始めた「エフアシスト」(仙台市若林区)。主力の粉末プロテイン「ハイクリアー」シリーズは、牛乳や大豆を原料とする成分と黒糖きなこ、ほうじ茶といったフレーバーの組み合わせが豊富で、100種類以上を展開する。

 宮西晶執行役員(47)は人気の背景を「フィットネスブームとともに健康意識が高まった。運動だけでなく、栄養もしっかり取ることの大切さが知られてきたのではないか」とみる。

 同社は、ハイクリアーのパンケーキミックスやみそ汁のもとなども販売する。宮西さんは「通常の粉末タイプ以外にも、タンパク質を補給しやすい形を考えた。日々の食生活に手軽に取り入れてほしい」と開発の意図を説明する。

エフアシストの商品。粉末やバーのほか、食事で取りやすいみそ汁なども展開する=仙台市若林区の同社

上手な取り方とは ―― 専門家に聞く

 タンパク質の重要性と上手な取り方について、食事療法や運動療法に詳しい東北大大学院医学系研究科の上月正博教授(リハビリテーション医学)に聞いた。

 タンパク質は筋肉や皮膚など体の組織を作り、体温や血糖値を一定に保つ最重要栄養素だ。プロテイン製品が人気だが、実は日本人は全般に不足気味。摂取量は1995年をピークに低下し、2019年には50年以上前のレベルまで落ち込んだ。年齢や活動量で必要量は異なるが、ピーク時さえ、多くの人は政府が示す目標量に届いていない。

 「痩せ願望」の強さや食生活の乱れが一因とみられる。また、高齢者は食が細くなるため、サルコペニア(筋力や身体能力の低下)などを招く可能性がある。世代を問わず、タンパク質を積極的に取るべきだ。

 政府も20年に摂取目標量を引き上げた。例えば、30、40代女性で1日のエネルギー必要量が2050キロカロリーの人なら、67~103グラムのタンパク質を取ることが目標となる。

 朝食抜きやダイエット目的で1日3食をきちんと食べない人が多いが、むしろ朝食でタンパク質を取る方が太らずに済む。また、適当な運動を加えれば筋肉量も増やせる。

 コンビニやスーパーにはドリンクやバー、ゼリーなどのプロテイン製品、サラダチキンや大豆加工品、ギリシャヨーグルトといった手軽な高タンパク食品が並ぶ。上手に活用したい。

 人気のプロテイン粉末はカロリーを抑えながら効率的に摂取でき、間食や高齢者の栄養補給に適している。牛乳や豆乳に溶かせば栄養価や風味が増す。アイスコーヒーにも合う。

 ただし、慢性腎臓病の人はタンパク質の摂取制限があり、注意が必要だ。高齢者や持病がある人はタンパク質の取り方について、まず主治医に相談してほしい。

[こうづき・まさひろ]東北大医学部卒。同大講師などを経て、2000年から現職。国際腎臓リハビリテーション学会理事長。「食べてやせる!若返る!病気を防ぐ!たんぱく質 プロテイン 医学部教授が教える最高のとり方大全」(文響社)など著書多数。山形市生まれ。65歳。

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