大阪・ミナミのホストクラブで平成24年、ホストの男性が多量の酒を飲まされて急性アルコール中毒で死亡したのは接客業務が原因だとして、男性の両親が労災保険法に基づく遺族補償給付などを求めた訴訟の判決が29日、大阪地裁であった。内藤裕之裁判長は「急性アルコール中毒の発症は業務に起因すると認められる」とし、不支給決定とした国の処分を取り消した。
両親の代理人によると、飲酒を伴うサービス業で急性アルコール中毒を労災と認めるのは初めてとみられる。
判決などによると、男性は田中裕也さん=当時(21)。24年8月1日、勤務先の大阪市中央区心斎橋筋のホストクラブ店内で飲酒を強要され嘔吐(おうと)した後、暴行されてさらに酒を飲まされ、急性アルコール中毒で死亡した。
内藤裁判長は判決理由で、店内では多量の飲酒を伴う接客が事実上黙認されており、田中さんは先輩ホストからの飲酒強要を拒絶できない立場だったと指摘。接客中の飲酒は「ホスト業務の一環と認められる」とし、急性アルコール中毒は「ホスト業務に伴う危険が現実化した」と判断した。
田中さんの死亡をめぐっては、両親がホストクラブの経営会社(清算)らを相手取り、8600万円の損害賠償を求めて提訴。大阪地裁は今年2月、経営会社の使用者責任を認め、会社側に約7300万円の支払いを命じている。
厚生労働省は「判決内容を精査し、関係機関と協議して判断したい」とコメントした。
判決後に大阪市内で会見した田中さんの父親(55)は「判決を聞いてほっとした。亡くなってから7年だが、やっと本当に落ち着いた」と話した。母親(49)は「仕事として一生懸命がんばっていたと分かってもらえるまで、なぜこんなに時間がかかるのか」とやるせない思いを吐露した。