ホットな青根温泉再び 10年ぶりに旅館が新規開業

宮城県川崎町の青根温泉で6日、新規の温泉旅館が10年ぶりに開業した。青根温泉は伊達政宗以降の歴代仙台藩主が湯治に訪れるなど長い歴史を持つが、ここ数年は旅館の廃業が相次ぎ、今年の春先は新型コロナウイルスの影響で大幅に客足が落ちていた。地元関係者は「久々の明るい話題。温泉街の活性化につながってほしい」と期待する。
 オープンしたのは「お宿はなぶさ」。和風の木造2階、地下1階で、12の客室がある。地下に男女用の露天風呂を設け、源泉掛け流しの湯が楽しめる。高級リゾートホテルで導入している飲食やドリンク、デザートなどを滞在中、自由に味わえる「オールインクルーシブ」方式を採った。
 はなぶさの建物は元々、別の温泉旅館だったが、2018年7月に営業不振などで廃業した。その後、青根温泉の旅館運営会社「坊源」が建物と土地を買い取り、新たな旅館として生まれ変わらせるため、改修計画を練っていた。
 順調に計画が進むかに見えたが、今春以降の新型コロナ感染拡大で不透明な状況になった。坊源が運営する旅館もコロナ禍の外出自粛の影響で、今春は宿泊客が8割近くも減った。それでも原玖二陽(くにはる)会長(77)は「温泉街活性化に向け諦めたくなかった」と振り返る。
 最終的に金融機関の融資などで約1億2000万円の資金を確保し、今年7月から改修工事を進めてきた。今回の開業で、青根温泉での一棟貸しを除く旅館は5軒目となる。
 青根温泉は1960、70年代ごろの最盛期に10軒以上の旅館が営業していたが、温泉街の衰退に伴い、これまでに半数が廃業。昨年10月には144年の歴史を持つ老舗旅館「名号館」も営業を休止した。
 青根温泉行政区長も務める原さんは「(政府の観光支援事業)Go To トラベルで客足も戻ってきている。温泉街は厳しい状況が続くが、新しい旅館と共に地域全体を盛り上げていきたい」と意気込む。

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