ホテル需要が急回復、稼働率は3年前の4倍…コロナ前の60%台には人手確保のハードル

ホテルや旅館の客室稼働率が回復を続けている。観光庁が発表した宿泊旅行統計調査で、ホテル・旅館の4月稼働率(速報値)は55・6%と、コロナ禍で最も落ち込んだ時期から4倍超に回復した。ただ、人手不足が深刻化し、本格回復につなげる工夫が問われている。(経済部 黒木健太朗)

コロナ禍前水準

 客室稼働率の50%超えは、2月以降、3か月連続となる。帰省客が増えてホテルや旅館の利用客が減る1月を除けば、政府の需要喚起策「全国旅行支援」が始まった昨年10月以降、50%超えが定着している。稼働率60%台が続いた新型コロナウイルスの感染拡大前の水準に向けて回復経路をたどる。

 コロナ禍では、政府の緊急事態宣言下にあった2020年5月に稼働率が13・2%まで低下した。20〜21年はおおむね20〜40%台で推移した。行動制限に加え、水際対策の強化で訪日客が消えた影響が大きかった。

 水際対策の緩和などを受けて今年3月は57%、4月は55%と稼働率は高い水準を維持している。訪日外国人客が急増したことで、需要は底堅さを増している。プリンスホテルなどを展開する西武ホールディングスの国内ホテル事業では、客室稼働率が昨年9月以降、前年同月比2割以上の伸びだ。「海外からの旅行者需要が上がってきている」(広報担当者)

不安材料

 宿泊者の戻りに勢いがある一方で、ホテル・旅館業界で不安材料となっているのが、人手不足だ。コロナ禍では、稼働率の急激な低下で、雇用調整を迫られたホテル・旅館業者は多い。経済活動が再開しても人手をなかなか確保できていない。

 日本ホテル協会が1月に実施したアンケート調査では、大半のホテルが「人手不足が営業に影響している」と答え、うち約16%が客室を稼働制限していた。宿泊サービスの質の維持と、客室稼働率のバランスに頭を抱えている。

 宿泊業以外の幅広いサービス業でも人手不足は深刻化している。ニッセイ基礎研究所の安田拓斗研究員は、「人手不足のために、稼働率を上げたくても上げられないホテルが多い。コロナ禍前の水準を回復するには時間がかかるだろう」と指摘する。

 客室の改装や食事、もてなしなど付加価値を充実して1泊当たりの客単価を高める工夫が必要になっている。

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