ホンダ参戦 EV黎明期 エコカー主役にらみ競争激化

大手自動車各社による電気自動車(EV)の市場投入が本格化してきた。米ゼネラル・モーターズ(GM)が今月にも「シボレー・ボルト」を、日産自動車が12月に「リーフ」の販売を始める。一方、ハイブリッド車(HV)を次世代エコカーの主軸に位置づけ、これまでEV投入に慎重だったホンダとトヨタ自動車も、17日(日本時間18日)に米ロサンゼルスで始まった「LAオートショー」で、それぞれ2012年の発売を予定するEVの試作車を初公開するなど、EV時代の幕開けの様相を呈してきた。(田村龍彦)
 ◆「本命は客が決める」
 ホンダは伊東孝紳社長がロサンゼルス入りし、オートショーの会場で自ら主力小型車「フィット」をベースにしたEVの技術を説明した。1回の充電で100マイル(160キロ)以上を走行。スポーツモードを備え、排気量2000ccのエンジン並みの加速を実現するなど、走りにこだわるホンダらしいEVに仕上げた。12年に日米の両市場に投入する。
 トヨタも資本提携する米EVベンチャー、テスラ・モーターズと12年の米国発売に向けて共同開発しているスポーツ多目的車「RAV4」のEVの試作車を初公開。100マイル以上を走行し、11年から路上テストを行うことも明らかにした。
 ホンダもトヨタも、エコカー戦略ではこれまでHVの普及に力を入れていた。しかし、「(次世代車の本命が)どれだと断言できない」(伊東社長)中で、EVも含めた全方位に戦略を修正し始めており、トヨタは小型車「iQ」のEVを12年に日米欧で発売することも決めた。次世代エコカーの本命について、トヨタの豊田章男社長は「お客様が決める。EVでもHVでも準備ができているようにしたい」と話す。
 EVはバッテリーの容量や高い価格、充電インフラなどが普及のネック。「成長市場の新興国を含めて、当分、収益の柱はガソリン車」(アナリスト)との見方も根強い。
 ◆加州の規制追い風
 ただ、カリフォルニア州は新車販売台数の一定の割合をEVとすることをメーカーに義務づける環境規制の導入を予定している。欧州でも二酸化炭素(CO2)の平均排出量が多いメーカーに罰金を科すなど、各地で環境規制が強化される中、「メーカーにとってEV販売の重要度が高まっている」(大手幹部)という。
 すでに日産の「リーフ」は今年度の国内販売目標の6000台が予約で埋まったほか、北米でも生産台数を大幅に上回る2万台の予約が入るなど好調な滑り出しをみせている。環境規制や大手各社の戦略車投入で、消費者も「EV時代の幕開け」を実感するようになれば、日産・ルノー連合が掲げる、12年度にEV生産50万台の目標も絵に描いたもちとはいえない。
 ■「盟主の座」 GM虎視眈々
 一方、再上場で市場に再生を印象づけたGMも、日本勢に対するエコカー戦略での巻き返しを狙っている。「シボレー・ボルト」の販売は、当初はカリフォルニアやテキサスなど6州限定だが、順次、全米に拡大。11年後半には、日本勢に負けない新車販売の好調ぶりをみせている中国市場への投入も予定しており、生産規模も11年の約1万台から、12年には約3万台に引き上げる計画だ。
 ボルトは発電用のエンジンを搭載しているため、「本当のEV」とは言えないとの指摘もあり、カリフォルニア州の補助金も適用されない。
 だが、野村証券金融経済研究所の桾本(くぬぎもと)将隆シニアアナリストは「(バッテリーのみで走行し、走行距離が限られる)ピュアEVの普及は国土の狭い国や配送業務など特定の地域や用途が中心だ」と指摘。一方で、長距離走行はボルトのようなエンジンを搭載するEVや、EV走行が可能なPHV(プラグインハイブリッド車)が有力とみる。
 補助金やインフラなど販売環境の整備に向けた政府などとの協力で、現在は日産がEV市場で先行しているが、アナリストの中には12年以降に量産が本格化すれば、「HV技術の蓄積やブランドがあるトヨタやホンダが有利になる」との見方もあり、EVの盟主の座をどこが射止めるのかは予断を許さない。

タイトルとURLをコピーしました