ホームから改札まで徒歩20分…日本一のモグラ駅に行ってきた

冷房が効いているわけではないのに真夏でも構内の平均気温は15℃以下。しかも、地下要塞やダンジョンを思わせる独特な雰囲気を持つ、そんな一風変わった駅があるのをご存じだろうか?

⇒【写真】不気味さや威圧感がハンパない改札への階段停車するのは普通列車が1日6本のみ

 それは群馬県みなかみ町にあるJR上越線の『土合駅(どあいえき)』。ちょうど谷川連峰の麓に位置し、鉄道ファンの間では“日本一のモグラ駅”と呼ばれている。

 首都圏といっても新潟県との県境に近く、アクセスしやすいとは言い難い。今回は朝6時過ぎに都内の自宅最寄り駅を出発。数回の乗り換えを経て、4時間近くかかってようやく土合駅に到着した。

 都心からは高崎まで新幹線を使うこともできるが、スムーズに乗り継ぎできても30分ほどの時間短縮にしかならないため、今回はあえて普通列車のみで移動。それでも都心からだと運賃は片道だけで3000円以上と決して安くはない。

 ただし、夏場の今の時期ならJRの普通・快速の1日乗り放題×5回分がセットになった『青春18きっぷ』もある。価格は1万1850円だが、家族での利用やほかの旅行などにも使うのであればこっちのほうが断然お得だ。薄気味悪いけど、逆にインスタ映えしそう!

 土合駅は鉄道ファンなら一度は訪れたい駅のひとつで、筆者以外にも同じ列車に乗っていた男性2人が下車。ホームは端から端までかなりあったが、現在は長い編成の車両は停車しないのか途中から先はフェンスで立入禁止になっていた。

 しかし、それにしても寒い。トンネル内なので当然といえば当然だが、真夏なのが嘘のようだ。普段は暑がりの筆者だが、このときは上着を持ってこなかったことを後悔してしまった。

 地下ホームからはひたすら階段を上っていかなければならないが、改札まではなんと462段! スタート地点にあった看板には「所要時間は約10分」とあったが、この段数を考えるとその時間で着けるのかは正直疑わしい。

 よく見ると、階段の横には幅2メートルほどの溝があるが、当初はここにエスカレーターを設置しようとしたのだろうか? 1日14~24人という駅の利用状況(※『群馬県統計年鑑』の2000年以降のデータより)を考えれば、採算に見合わず導入しなかったのも納得できる。

 だが、自分の足で462段の階段を上るのはやっぱりキツい。体力的なこともさることながら薄暗くて壁のいたるところにシミがある階段のトンネルはどこか薄気味悪く、1人だと正直ちょっと怖い。

 途中数か所で休めるようにベンチが置かれており、休憩しながら上って20分かけてようやく改札に到着。トンネル内に比べるとさすがに暑いが、土合駅の駅舎があるのは海抜663メートルの高地。そのため、不快に感じるほどの蒸し暑さもない。

車で訪れる観光客も多い

 なお、土合駅には地上にもホームがあり、高崎方面の上り線はこちら側。上下線のホームの高低差が70メートルも離れているのは、全国でもこの駅だけだ。

 冒頭の写真の通り、駅舎は谷川岳への登山客の玄関口となっているからか三角屋根が印象的な山小屋風。少し年季は入っているが、無人駅とは思えないほどしっかりとした建物だ。

 駅前には広々とした駐車スペースがあり、観光客のものと思われる車が何台も停まっていた。実際、階段を上っている間も数組の観光客とすれ違い、電車ではなく車で訪れる人のほうが多いようだ。

 地元では土合駅自体が観光スポット扱いになっており、鉄道に興味がない人でもちょっとした冒険気分が味わえる。近くには有名な水上温泉もあるので、日帰りでも泊まりでもきっと楽しめるはずだ。<取材・文・撮影/高島昌俊>

タイトルとURLをコピーしました