「マスクをしていても電車内での感染リスクはありますし、最近では通勤時間帯などで満員状態に戻ってきています。これまで電車内でのクラスター感染は報告されていませんが、そもそも把握するのが難しく、絶対にないとは言い切れません。今後、電車での感染者が増える可能性はあるでしょう」
こう語るのは、PCRセンターにも勤務する感染症専門医で、のぞみクリニックの筋野恵介院長。東京都では連続して新型コロナウイルスの感染者数が100人を超えるなど、全国的に増加の一途をたどっている。
キャバクラやホストクラブといった“夜の街”での感染事例が連日、報道されるなか、医療関係者たちが危惧しているのが電車や駅で働く鉄道従事員の感染増だ。
「7月1日、JR東海道線と横須賀線のグリーン車で車内販売などを担当する女性スタッフの感染が発表されました。翌日には都営新宿線の定期券発売所に勤務する男性の感染も発表され、鉄道関係者は危機感を抱いています」(医療ジャーナリスト)
海外でも鉄道での感染が社会問題化している。
「6月に入っても連日、1千人前後の新規感染者が出ているイギリスでは、6月15日から鉄道やバスなどの公共交通機関を利用する際に乗客のマスク着用が義務付けられました。違反者には罰金が科せられるなど、徹底しています」(前出・医療ジャーナリスト)
日本にも“電車クラスターの恐怖”がすぐそこまで来ている。
「神奈川県や千葉県といった首都圏では、東京での休業要請が全面的に解除された数日後から感染者が増えています。特にベッドタウンとして県をまたいで東京へ通勤する人も多い埼玉県では、7月3日に2カ月ぶりとなる20人以上の感染者が出ました。感染経路不明の人も多く、電車を使って通勤や県外へ遊びに行く人が増えたことは理由の一つとしてあるでしょう」(前出・医療ジャーナリスト)
前出の筋野先生は言う。
「JRはすいている車両を教えるアプリなどを開発しましたが、リスクが高いのはホームにある待合室などです。密閉された部屋に人が密集する空間になるので、注意が必要です」
なかでも、特に危険なのが窓を開けられない環境で長時間移動する新幹線だという。
「冷暖房が逃げないよう密閉する造りになっている新幹線内の待機スペースはリスクが高いです。また、新幹線では東京から乗車した人が名古屋で降りた同じ席に、名古屋から新しく別の人が座るという状況もありえます。前の乗客が感染者だった場合、同じ座席に後から座った人には接触感染のリスクがあります」(筋野先生)
そんな新幹線内での接触感染には消毒が効果的だという。
「途中下車しても清掃はありませんので、前の乗客のことがわからない以上、テーブルなど最低限、人が触るところは消毒したほうがいいです」
行楽シーズンの電車移動での“お楽しみ”も控える必要がある。
「これからは乗る側のマナーも大切です。旅行などで家族や友人らと乗る場合、座席を回転させて向かい合っておしゃべりや食事をするのは、やめたほうがいいでしょう」(筋野先生)
無責任な移動がウイルスを運ぶ。この夏は自覚を持った行動が求められそうだ――。