ことしのホームレス実態調査で、仙台市は前年と比べ16人増加し、増加数が全国20政令指定都市のうち最も多かったことが分かった。他都市のほとんどが前年より減っている。仙台市の担当者は「東日本大震災の復興関連事業で仕事が見つからない現状などが影響した」とみる。
調査はホームレスの自立支援の施策などに生かすのが狙い。ことし1月、各自治体が巡回による目視で人数を確認し、厚生労働省が報告を受けてまとめた。2012年1月の前回調査との増減数を示した。
結果は表の通り。仙台市以外に前年より増えたのは新潟、静岡の両市でともに1人。残りの17市は減少した。減少数は多い順に大阪市270人、名古屋市42人、北九州市30人だった。
仙台市のホームレス数は103人。内訳は男性94人、女性5人、服を着込むなどして性別の分からない人4人。確認された場所は公園23人、河川11人、道路53人、その他の施設16人だった。
調査日の天気は気温が氷点下になった前回より穏やかで、目に付きやすい路上に出てきやすかったことも増加につながった可能性があるという。
仙台市社会課の担当者や福祉関係者によると、震災後、各地の労働者らが震災関連の仕事を求めて市内へ流入。仕事を見つけられずに路上生活に陥るケースがある。国内最大の日雇い労働者市場を抱える大阪市や西日本から移ってくるケースも少なくない。
同課の担当者はホームレス対策について「自立支援施設などでフォローする体制を取っている。引き続き路上での巡回相談などを強化し、必要とする支援などの把握に努める」と話す。
◎生活拠点はネットカフェやサウナ/「不安定居住者」も相次ぐ/仙台周辺
東日本大震災後の仙台市内や周辺で、インターネットカフェやサウナ、車などを生活拠点とする人が相次いでいる。安定した職に就けない事情などが背景にあり、福祉関係者からは「不安定居住者」と呼ばれる。
福祉関係者は「不安定居住者は仙台市と周辺で数百人に上るのではないか」と推測。「生活が苦しくなり、意思に反して路上生活に追い込まれるリスクがある」と懸念する。
関東の30代男性は昨年夏、宮城県内の建設会社に雇われ、宿舎に住み込んで働いた。賃金をほとんど受け取れずに宿舎を飛び出し、列車で仙台市内へ移り、ネットカフェを利用した。その後、無銭飲食をしたとして逮捕された。
元建設作業員の20代男性も同じころ、福島県から仙台市内へ来た。パチンコで稼いだお金で食いつなぎ、ネットカフェやビジネスホテルを転々とした。「仕事を見つけて普通の暮らしがしたい」と言う。
路上生活が長い中年男性は「ネットカフェやサウナで生活しお金が尽きると路上に出る人が震災後に増えた」と証言する。
福祉関係者によると、最近、仙台市やその近郊では車上生活をする人が増えている。
坂総合病院(塩釜市)の神倉功事務局次長は「震災後、路上生活者が救急車で運ばれてくるケースが増えている」と説明。運ばれた人は脱水症状や栄養不足になっており、点滴などの措置をしているという。