一時代を築いたポケットベル(ページャー)のサービスが9月30日に終了する。29日には東京・秋葉原で「みんなのポケベル葬」が行われ、ポケベルが大流行した1990年代をしのんだ。
ポケベル葬を主催したのは、葬儀社紹介サイト「みんなのお葬式」と東京都葬祭業協同組合。企画を担当した渡邊幸次さん(鳥越葬儀社)はポケットベルを使った経験のない世代だが、会社の先輩から話を聞いて興味を持ったという。
「葬儀社のスタッフは常に連絡がつく状態でいないといけないことも多く、ポケベルが登場した当時は画期的だったそうです。大変お世話になったお礼の気持ちと、皆さんにもお別れの場を提供したいという考えで企画しました」(渡邊さん)
式場ではポケベルのパネルを遺影に見立て、通行人や買い物客など約300人が手を合わせた。画面には1990年代に流行した数字の語呂合わせで「1141064」(愛してるよ)と表示した。
「さよなら(3470)なども考えましたが、やはりポケベルで一番使われたのは『愛してるよ』でしょう。式場で当時の思いがよみがえったのか、泣き出す方もいました」。参列者には精進落としの代わりにメイドさんがコーヒーをふるまった他、お清めの塩とお礼状を渡したという。
ポケベルは、数桁から十数桁の数字を表示できる携帯用の受信専用端末。80年代に外回りの営業マンなどを中心に利用者が拡大し、90年代には学生にも普及した。ピークの1995年度末に加入契約者は1061万人を超えた(総務省調べ)。
その後、PHSや携帯電話の普及でポケベルの契約数は減少し、現在も無線呼出しサービスを提供しているのは東京テレメッセージのみ。昨年12月、同社も19年9月末でサービスを終了すると発表した。