マザーズジョブカフェ 就職と保育 一カ所で相談

子育てのために仕事を辞めた女性の再就職を支援しようと、自治体が国の出先機関やNPO(民間非営利団体)と連携し、一カ所で相談・紹介を受ける「マザーズジョブカフェ」が今夏、京都にオープンした。求人情報だけでなく、働き方相談や保育所情報などすべてを集約した「ワンストップサービス」。開設3カ月で延べ2千人以上の相談者が訪れている。(田野陽子)
 ◆生活面の情報も
 京都市南区の京都府民総合交流ブラザ「京都テルサ」に8月開設された「マザーズジョブカフェ」((電)075・692・3445)。淡いグリーンの床、ピンクのいすなど明るい室内には子供たちが遊べるキッズコーナーもある。
 施設では最初に「総合プレ相談」を訪れ、目的別に分けた4つのコーナーのいずれかへ案内される。
 働き方や適性などの相談は「女性再就職支援コーナー」でカウンセラーによるアドバイス▽母子家庭の就業生活相談や福祉制度の説明は「母子自立支援コーナー」▽働き方を決めている人は具体的な求人情報を受ける「マザーズコーナー」▽子育て相談や保育所の空き情報は「ママさんコンシェルジュ」。
 このうち、「マザーズコーナー」は国のハローワークが設置したコーナーで専門の相談員が担当。「ママさんコンシェルジュ」はNPOと連携し、子育て経験のある先輩ママたちが相談に乗る。
 府男女共同参画課の足立阿季子さんは「育児中の女性が働くには、家庭の状況や保育所の入所時期・場所などさまざまな悩みがある。すべてが密接に結び付いており、就業支援だけでは解決しない」と説明する。
 初めて訪れた3歳の子供を持つ区内の主婦(36)は「家庭の状況を相談員に知ってもらいながら仕事を探せるのが何よりも魅力。子連れでも安心して利用でき、これからは積極的に活用したい」と話す。
 こうした動きは、全国的に少しずつ広がっている。千葉県はその先駆けとして、平成18年に千葉市内に「子育てお母さん再就職センター」を開設。個別相談だけでなく、キャリアアップのセミナーなども開かれており、昨年1年間の利用者は延べ約5千人。年々増えているという。
 ◆再就職には壁
 「マザーズジョブカフェ」の開設から3カ月間で、パートなどの就職内定にこぎ着けたのは63人。悪化する経済情勢で厳しい雇用状況が続く中、運営者側である府は一定の成果が得られたと評価する。
 20年に内閣府がまとめたアンケート「再チャレンジ事例調査」では、厳しい現状を浮き彫りにしている。再就職を支援する15府県の地域モデル事業を利用した女性のうち、就職できたのは55%。正社員・正職員を希望した人も多かったが、実際には70%超が非正規社員だった。
 足立さんは「今は相談者にも厳しい雇用状況を認識してもらう必要があるが、私たちも就職先となる企業の開拓に努めたい。一つの場所で集約する意義を最大限生かして、母親たちをいろんな側面からサポートしたい」と話している。
 ■出産後も仕事継続は25%
 第13回出生動向基本調査(平成17年)によると、第1子の出産後も仕事を続けている妻は昭和60年ごろから一定し、25%前後と大きな変化はない。
 厚生労働省の調査(21年)では、未就学の子供を持つ女性が仕事を辞めた理由として、「子育てとの両立が難しい」「解雇、退職勧奨された」などの回答が全体の3分の1にも及んだ。現在、再就職を希望する女性は25~54歳で264万人といわれ、国も17年に関係省庁が連携して支援する「女性の再チャレンジ支援プラン」を策定し、再就職を後押しする。

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