新型コロナウイルス感染拡大で一時は品薄となり、価格も高騰したマスクだが、現在は流通も安定し、「1枚3円」で売られるなど値崩れを起こしている。業界団体によると、例年マスク需要が高まる秋冬以降も入手に困るような事態にはならないとみる一方、「購入の際には品質確認を」と呼びかけている。
マスク不足は2月ごろから発生し、一時は量販店などに入荷待ちの行列ができる状態が続いた。
その後、飲食店や雑貨店でも箱入りのマスクを店頭に並べて販売する光景が身近になった。5月以降はやや入手しやすくなったが、価格は1箱50枚入りで3000円前後が相場だった。
現在、東京都内の雑貨店では1箱50枚入りが600円で店頭に並ぶ。女性店主は「仕入れ値と比べればほとんど赤字。ただ、有名なメーカーの商品でもないし、値上げしても売れる状況ではなくなった。それなら店頭に並べて足を止めてもらうだけでも、本業の商品を買ってもらうきっかけになるので」と苦笑いする。
上野のアメヤ横丁では50枚入りマスクの相場が400円前後まで下落。通販サイトの在庫状況や価格を一覧できる「在庫速報.com」で、1枚当たりの最安値が3円まで下落していた。
マスクバブル崩壊の背景には、輸入品の増加のほか、家電大手のシャープなど他業種が相次ぎ参入した動きもある。
日本衛生材料工業連合会(日衛連)によると、8月に国内に供給されたマスクは10億枚程度で、うち約半数を国産マスクが占めた。
衛生用品大手のユニ・チャームは「現在はマスクの生産量を通常の2~3倍に増やし、マスク需要が高まる秋冬に向けてはさらに増加する見込みだ」(広報室担当者)とする。
秋冬以降のマスク供給について、日衛連の担当者は「輸入や国内生産の増加で、マスクの供給自体は潤沢だ。人気商品はすぐ売り切れる傾向にあるが、メーカーにこだわりがなければ入手するのに危機感を覚えることはないだろう」とみる。
気になるのは流通しているマスクの品質だ。日衛連傘下の全国マスク工業会は、会員マークをパッケージに掲載することで商品の品質保証を行っている。
前出の日衛連担当者は「マスクの購入前にはパッケージに注目してほしい。会員マークがなくても、機能表示や連絡先がきちんと記載されている商品はある程度信頼できる指標にもなるはずだ」と語る。
激安でも粗悪では意味がない。