新型コロナウイルスの感染拡大で品薄状態が続いていたマスク。最近、徐々に市場に出回り始め、岐阜県内でも見掛けることが増えてきた。衣料品店など従来はマスクを扱っていなかった店にも並んでおり、中でも「おちょぼさん」の愛称で親しまれる千代保稲荷神社(海津市平田町三郷)の参道では、大量にマスクが売られている。かつては品薄による高額転売などが社会問題化したマスク販売の「今」を探ろうと、同参道を訪れた。
◆衣料品店「あります」
「マスクあります」「個数制限ありません」。13日午前の同神社参道。名物の串カツ店などが臨時休業の貼り紙をしてシャッターを閉める中、手作りではない箱入りや袋入りのマスクを店頭に積み上げて販売する店があった。その数は参道沿いの11店に上り、ほとんどが衣料品店だ。
相場は不織布マスク50枚入りが1箱当たり2千~2500円程度。平時よりも割高だが、それでもこのところマスクが出回り始めて値崩れしているという。ある衣料品店の30代店主が「連休中よりも1箱当たり千~1500円ほど値段が下がった」と教えてくれた。
現在は仕入れ価格をわずかに上回る値段で販売する在庫処分期間に入ったという。「在庫を売り切って、うちは終わり。500円ぐらいで仕入れて高く売っているんでしょうって聞かれるけど、そもそも仕入れ価格が高い」とこぼす。
◆中国製、問屋介し仕入れる
なぜ、衣料品店でマスクが売られているのか。同店主によると、以前は衣料品を製造していた中国の工場が需要低迷でマスク製造にシフト。衣料品問屋が中国から大量にマスクを輸入し、その問屋を介して仕入れているという。
「衣料品店は休業や時短営業をするともらえる協力金の対象外だった。外出自粛で参拝客も売り上げも減少しているのに、家賃も従業員の給料も払わなければならない。マスク販売に期待した」と別の衣料品店の60代店主が明かした。同店では4月中旬から販売に参入。3月ごろは1箱6千円近くで売る店もあり、それでも買う客がいたため参入店が増えたという。
すでに値崩れが始まっているが、大型連休明けに10万枚以上を仕入れた店もあるという。同店主は「うちは半数を返品した。問屋は半値でいいって言うけど、まだ値段は下がると思う。出回り始めたからお客さんも買わんし、マスクに手を出したらあかんと思った」と話す。
◆「出回ってる」素通り
参道に参拝客の姿は少ないが、中には「食品関係の仕事をしているから」と4箱200枚を買った人もいた。それでも多くの人が「もう出回っているから」と素通り。こうした状況の中、政府が全世帯に配る布マスク2枚が14日から、県内にも届き始める。参拝客の一人は「今さら届いても遅い。最初から期待はしていないけど」とつぶやいた。
帰りに近くのコンビニに寄ると、不織布マスク2袋が売られていた。店の人に聞くと「コンビニはまだまだ。ドラッグストアで出始めた」とのこと。福井県に本社を置くドラッグストアチェーンの近隣店をのぞくと、100袋以上が並んでいた。マスクを求める客が早朝から長い行列をつくった日々が、遠い昔のようだ。