生配信の放送事故や令和女子あるあるといったネタ動画を投稿してはたびたびバズり、チャンネル登録者数62万人を誇るYouTuber、momohaha(ももはは)さん。単純に笑える動画も多いのだが、その裏にはネット社会が作りあげたルッキズムへの彼女なりのアンチテーゼがあった⁉ 女性バズ動画クリエイターの心の奥底に迫ったインタビュー。
放送事故風動画が473万回再生
「みんなが見たいって言ったんだよ…だからお前らって嫌いなんだよ、クソが!」
マスク姿で生配信する女の子が視聴者にのせられて素顔を晒した瞬間に、それまでうなぎのぼりだった視聴者数がみるみる減っていき、少女はネット民にブチ切れて……。
momohahaさんが2021年7月に投稿した、この「【放送事故】生配信中にマスク美人のブサイクすぎる素顔がバレて大炎上」というタイトルの動画は瞬く間に各SNSを駆け巡り、YouTuberに投稿された本家動画は、約473万再生(5月10日時点)のメガヒット作品に。
momohahaさんはあえてブサイク風メイクと上歯茎を出す変顔で撮影に臨んだのだが、これを本物の放送事故だと勘違いする人が続出するほどリアリティのある演技と編集で、一気にネット上の有名人となった。
それ以降も生配信放送事故風ネタ動画等を定期的にバズらせるYouTuber、momohahaさんの“心の素顔”とは……?
――「【放送事故】生配信中にマスク美人のブサイクすぎる素顔がバレて大炎上」が超バズとなりましたが、なぜこれを投稿しようと思ったんですか?
momohaha(以下、同) 当時はコロナ禍のマスク生活もあって、“マスク詐欺”って言葉が流行ってて。特に配信者は「声がかわいいと素顔もかわいい」と勝手に思われることが多かったんです。
で、私はニコ生風の配信ネタを撮っては自分で編集したり、メイク系や変顔動画も投稿していたので、これを融合させればバズるんじゃないか、と。
動画内に流れてくるコメントも全部自分で打ったんですが、インフルエンサーとかが本物の生配信だと勘違いして広めたものだから、当初は“かわいそうな子”扱いされてました(笑)。
批判コメントを恐れない理由とは
――この動画で一躍脚光を浴びたmomohahaさんですが、実はそれより4年以上前の2017年3月から動画を投稿して、現在の総作品数は1000本を超えているんですね。
そうですね。「【放送事故】生配信中にパパ活がバレて大炎上した人気アイドル」とか「【生配信】メンバー同士が不仲すぎる人気アイドルのヤバいライブ配信」みたいな、生配信でちょっと業界の闇が見えちゃうみたいなネタとか、キャバ嬢やホス狂いをテーマにした動画なども投稿しますが、一番反響があったのはやっぱりマスク詐欺ですね。
ただアイドルのパパ活バレ動画をTikTokにあげたら、運営が本物だと勘違いしてアカウントをBANされたこともあります。意外とみんな信じちゃうんですね。
――それだけリアリティがあるんでしょう。映像制作はいつ学んだのですか?
昔から『世にも奇妙な物語』など、短いけど見終わった後に「何だったんだコレは……」と感じるような作品がすごく好きで、そういうものを自分で作りたいなと。
ショートムービーや物語を最初に好きになったのは小学生のときですね。
私、アメリカ人の父と日本人の母のハーフで、もともと米軍基地内の小学校に通ってたんですけど、環境が合わなくて日本の小学校に転校したんです。
でも、そこでもうまくなじめなくて『ディズニー・チャンネル』ばっかり見ていたら、そこでの世界観や演じてるキャラが濃いところが楽しくて、真似しているうちに社交的になれました。
――ディズニー作品ってリアクションがオーバーなのが特徴ですもんね。
人と話すときも常に頭の中でシミュレーションするようになりました。
それで中学生のときにVine(かつて人気があった6秒動画共有サービス)、高校生でMIXCHANNEL(ショート動画共有サービス。現ミクチャ)が流行っていたから、自分のネタを投稿したら反響があって。
YouTubeならもっと長い動画が撮れるよなってことでYouTubeも始めました。
――まさにショート動画の申し子。ただ、内容的に批判を受けることもあるのでは?
批判も覚悟のネタというか、賛否両論ないとおもしろくないなって思うんですよ。見た人全員がすばらしいと言う動画はなんか物足りないなって感じちゃって。
誰かに伝えたいものがある作品には批判的な意見はつきものだし、そういう作品のほうが人の記憶に残ると思ってるから、批判の声は気にしません。
日本や韓国は欧米より外見至上主義?
――ではマスク詐欺動画でも伝えたいことが?
YouTubeと違って加工が使えるTikTokの流行とともにルッキズムが増えたと感じていて。そのせいで、かわいく加工して投稿していた女の子たちが加工のできないテレビとかに出たときに「顔が違う!」とすごく叩かれるんです。
別に彼女たちは騙そうとして加工技術を使ったわけじゃないのに、勝手に誤解した人から叩かれるって酷いなと思ったことも、投稿した理由のひとつです。
――マスクをして素顔を隠すのが当たり前になった生活も、ルッキズムに拍車をかけている?
「【病む】赤の他人にマスク詐欺と言われて外せなくなったんだが」という動画でも最近あった嫌だったこととして報告しましたが、電車の向かいに座った5人組くらいの男子高校生が、他のマスクをしている女性の乗客の素顔を想像して点数とかつけてて。
私に対する話も聞こえてきたから怖くてマスクを外せなくなったんです……。
でもそういうことって口には出さないだけでみんな思ってるんですよね。女子だって“マスクイケメン”みたいな話はよくしてるし。
マスクが当たり前になったせいで勝手に素顔を想像して、実物を見てガッカリして文句を言う人や、それを恐れてマスクを外せない人も増えていると感じますね。
――それが日本の若者の脱マスク化を遅らせているのかもしれません。
日本って欧米に比べて容姿や外見を気にする人が多いなって思うんですよ。
海外の人はちょっとの外出ならTシャツ短パンでメイクも薄めだけど、日本人はメイクもファッションもバッチリキメる。
日本や韓国が外見至上主義だなと感じるのは、特に映画やドラマです。
ブスな子が整形したり、ダイエットやメイクを努力してチヤホヤされるといった、どちらかというと容姿が変わったら人がついてきた、みたいな作品が多い。
欧米は内気だった女の子が自信をつけて性格が明るくなって行動が積極的になったから愛されるといった、むしろ性格面にフォーカスした作品が多い気がします。
――なるほど。
ただ、そういう(美人になって成り上がる)映画やドラマがルッキズムを助長しているというよりは、制作者がはやっているものを取り入れた結果のような感じはしますが。
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一時ネットを席巻したマスク詐欺動画には現代のネット社会に対する痛烈なメッセージが隠れていた。しかし、そうはいっても外見を疎かにするのはイマドキ女子には難しいこと。そんな若者の苦悩にmomohahaが思うこととは。