マツダが米フォード・モーターと新型車の共同開発を進めるほか、新たな業務提携を模索するなど「戦略的提携関係」具現化に向けアクセルを踏み込んでいる。一昨年11月にフォードとの親子関係を解消、マツダの「フォード離れ」がささやかれていた。しかし、マツダはあくまでフォードとの提携を軸に生き残りを図る考えのようで、“緩やか連合”で関係を進展させる。
両社は現在、新型車1車種の共同開発を進めている。山内孝社長は「双方が勝ち組になる新しい提携をしたい」と述べ、新たな関係を構築する可能性を示唆した。部品の共同購買など、規模のメリットを享受できる提携も視野に入れているという。
マツダが「重要市場」と位置づける中国では、南京、重慶の2つの合弁工場に割り振っていたマツダ車の生産を、今月から南京に集約した。人気車種「マツダ6」(日本名アテンザ)の生産を強化するためだ。同社は中国での今年の新車販売目標を前年比22%増の22万台とシェアアップを狙う。
山内社長は「両社の提携は30年以上の歴史があり、この業界で一番成功した提携事例」と評価し、「戦略的パートナーとして協力できる分野で協力したい」と意欲を示す。
フォードは1979年、経営不振に陥ったマツダに出資し、96年にはマツダ株33.4%を取得して経営権を握った。マツダはその後再建を果たし、フォードの世界戦略にかかせない「孝行息子」といわれた。ところが、世界同時不況をきっかけにフォードが経営難に陥り、2008年11月にマツダ株約20%を売却。マツダは今年3月、トヨタからハイブリッド車の技術ライセンスを受けることを発表し、「フォードとの関係が疎遠になるのでは」との声が挙がっていた。
最近の自動車再編は出資比率の低い緩やかな提携が主流だ。スズキと独フォルクスワーゲン(VW)との提携や、仏ルノー・日産自動車連合と独ダイムラーとのケースでも、出資比率を抑え、プロジェクトごとの連携強化を目指している。