先日、サッカーの中国五輪代表チームが遠征先の英国で試合中にけが人を出す乱闘騒ぎを起こした。中国人の選手、観客のマナー欠如が北京五輪関係者の深刻な懸念材料となっている。北京市は開幕500日前の27日から五輪の言葉遣いを良くしようと「侮辱語排除」キャンペーンを始める。しかし、一人っ子でネット世代の若者にはそんな忠告も押しつけがましく聞こえるようだ。(北京 福島香織)
突然、赤いユニホームの男がジャンピング・パンチ。あれよあれよという間に選手、審判が入り乱れての大乱闘。2月7日にロンドンで行われたイングランド2部リーグ、クイーンズパーク・レンジャーズ(QPR)との親善試合で中国五輪代表チームは映画「少林サッカー」さながらのハチャメチャぶりを見せた。
中国五輪代表チームの乱闘騒ぎはこの試合だけでなく同じ遠征中、すでに2度発生していた。
先のドイツW杯決勝戦で相手選手に頭突きして退場させられた元フランス代表主将のジダン選手も「中国選手のラフプレーはひどい」として、今年6月に四川省成都市で行われる予定だった慈善試合への参加を断った。
この乱闘は突出しているものの、中国代表選手のマナーの悪さは枚挙にいとまがない。陸上・障害競争の劉翔選手はアテネ五輪で勝利したとき「私はアジアの代表で黄色人種の代表だが、(アジアの中に)日本は含まれていない」と言い放った。最近では世界卓球選手権ザグレブ大会選抜戦で王励勤選手らが試合中、相手をののしったり、対戦相手と握手をきちんとしないなど無礼な振る舞いが目立った。
観客のマナーも悪い。昨年暮れのアジア大会バドミントン男子団体戦の中国対インドネシア戦で中国人観客が「シャービー!審判」と大合唱。「シャービー」とは公の場でとても口にできないような最低の侮辱語だ。しかしスポーツ会場では、勝敗に熱くなった選手や観客が自分や味方を鼓舞するより相手を侮辱する言葉を口にする光景が日常的になっている。
対戦相手や審判に敬意を表するスポーツマンシップとはほど遠いマナー欠如を生んだ背景には、中国の人口抑制政策により一人っ子として甘やかされ放題に育った若者世代の傲慢さに、こらえ性のなさ、親のしつけ不足が指摘されている。
卓球男子の劉国梁コーチは「いくら技術が優秀でも、一人っ子選手の性格は簡単には変えられない」と中国メディアに嘆いてみせた。
中国の威光を世界に発信するはずの北京五輪本番で無礼な振る舞い、侮辱語、暴言が横行すれば「中国、北京のイメージを損なう」だけでなく、大会運営や外交への悪影響も出かねない。
それだけに北京で開催された中国人民政治協商会議(全国政協)では作家の王蒙・政協委員が五輪代表選手らの言葉遣いについて(1)勝利コメントで皮膚や目の色、国籍に絡め政治的に微妙な内容に触れるべきでない(2)自分が負けても対戦相手を讃えるべきだ(3)日本選手への無礼、非友好的な表現はただすべきだ-など7項目の苦言を呈した。
だがネット上には「選手の勝利コメントに口を挟むな」という若者の本音とともに「SB(シャービーの略語)」の書き込みが踊っている。
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