化粧品販売などを全国で手がける「アイテック・インターナショナル」グループが国税当局の税務調査を受け、計約38億円の所得隠しを指摘されたことが関係者の話でわかった。
架空経費の計上や売り上げの一部除外によって利益を不正に圧縮したなどと指摘されたという。
関係者によると、アイテック社は2017年設立で、化粧品やサプリメントを販売。新たな顧客を獲得した会員に報酬を支払う「連鎖販売取引」(マルチ商法)で事業を拡大し、20年11月期の売上高は約140億円に上った。
税務調査は東京、金沢、関東信越、福岡、高松の各国税局が実施。仕入れ先の化粧品製造工場や、法人会員、個人会員など20か所以上が対象になった。
この結果、アイテック社は20年11月期までの3年間に取引先に対して架空の外注費を計上したり、売り上げの一部を除外したりして利益を不正に圧縮し、税負担を免れていたことが明らかになったという。
申告漏れの総額は会員を含めてグループ全体で約49億円に上り、国税当局はこのうち約38億円について仮装・隠蔽(いんぺい)を伴う所得隠しにあたると判断。重加算税を含め法人税など約19億5000万円を追徴課税したとみられる。
アイテック社は昨年10月に社名を「アースジャパン」に変更し、本店を東京都内から金沢市に移転。ホームページによると、以前と同様の商品を取り扱っている。読売新聞の取材に、期日までに回答しなかった。
■アイテック社、虚偽説明で停止命令歴も
アイテック社を巡っては、消費者庁が21年8月、勧誘時に特定の大学名を挙げて「共同研究した」と虚偽の説明をしたなどとして、同社とオーナーの山口孝栄氏(68)らに対し、特定商取引法違反でいずれも6か月間の取引停止や業務禁止の命令を出していた。
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同庁によると、同社の連鎖販売取引の仕組みはこうだ。まず、会員になるには、最初に40万~50万円分の商品を購入し、その後も毎月1万円程度の購入を継続する必要がある。
会員が新規会員を獲得すると、1件あたり2万円の報酬が支払われるほか、多くの傘下会員を抱える会員には別途、報酬が入る。会員は20年12月時点で約6万5000人に上ったという。
「まるで宗教にはまったようだった」。東北地方に住む60歳代の母親が会員になった30歳代女性は、取材にそう振り返った。
女性と母親が、親族から「会わせたい人がいる」と会員を紹介されたのは18年秋。「会員になって別の人を誘えばお金が入る」といった話の後、「今からセミナーがあるから行きましょう」と誘われた。
女性は「マルチだ」と直感して断ったが、セミナーに参加した母親が会員に。自宅に毎月、大量の化粧品が届くようになった。
女性は「やめた方がいい」と進言したが、母親は「商品がいいのよ」と聞く耳を持たなかった。同社の説明には虚偽があると伝えても、「ちゃんとした会社なの」と反論したという。
女性は結婚を機に21年秋に家を出た後、母親とほとんど連絡を取っていない。母親は同社に100万円超を支払っているとみられ、女性は「最初に勧誘された時に止められていたら……」と悔やんでいる。