マンションは低層階より高層階の方が値段も人気も高い。特にタワーマンションではその傾向が顕著で、最上階は低層階の2倍もの値段がつくことがあるほどだ。しかし、実際に住まいとして考えたとき、本当に高層階は住みやすいのだろうか。逆に高層階ならではの欠点などはないのだろうか。そのあたりについて、豊商事不動産の津島さんに聞いてみた。
「実はデメリットは少なくないんですよ。窓を開けられなくて洗濯物が干せなかったり、朝の時間はエレベーター待ちができたり。あとは免震構造になっているマンションだと、強風が吹くだけで建物が揺れたりすることもあります。震災時にはエレベーターがストップするので、高層階まで階段で上らなければなりませんし」
たしかに今年3月に発生した東日本大震災ではマンションのエレベーターが軒並みストップし、自宅まで階段で上らなければならないという高層階ならではの弱点が浮き彫りになった。
ならば将来の震災に備え、高層階まで階段で上ったらどれほどの時間と体力を消耗するのか、その実態を知っておきたいところ。ということで、津島さんにもご協力いただき、40階のタワーマンションの最上階まで階段で上り、その疲労度を検証してみることにした。ちなみに筆者はやや運動不足気味の30歳男性。「かかった時間」と「歩数」はすべて1階からの合計値である。
●1~10階
かかった時間:約2分半
歩数:286歩
疲労度:4階くらいまでは軽快に上れたため、この10倍程度なら楽勝! と思いきや、10階直前から一気に汗が噴き出してきた。タワーマンションの階段部分は密閉されていることが多く、夏はサウナ状態になるようだ。
●11~20階
かかった時間:約5分
歩数:523歩
疲労度:要した時間は10階までの約2倍。疲労度は比べものにならないくらい増加した。途中から息切れし始め、20階にたどり着いたとき初めて休憩を入れた。もしエレベーターが使えない日々を過ごすなら、個人的には20階くらいが限界である。
●21~30階
かかった時間:約8分
歩数:729歩
疲労度:手すりにつかまらないと足が上がらなくなった。このあたりで今回の実験を後悔し始めた。しかし同行していただいた津島さんは平然とした表情。疲労度にはかなり個人差があるようだ。
●31~40階
かかった時間:約16分
歩数:953歩
疲労度:30階でかなり長い休憩を入れ、最後は息も絶え絶えになりながら40階まで到達した。個人的にこれ以上は絶対に無理だと思った。時間的にはたった16分であることを思うと、階段を上るという動作は短い時間でもかなり疲労するようだ。
今回の検証の結果、30階を超えるような高層階まで階段で上るのは大人の男性でもかなり大変だということがわかった。外出先から帰るたびにこんな思いをしなければならないとなると、エレベーターが復旧するまで外出する気になれない――なんてこともありそうだ。
とはいえ、「タワーマンションの価格が震災後に下がったかというと、そうでもないんです」と津島さんは言う。
「サンプルが少ないのでなんとも言えませんが、賃貸に関してはいまだに高層階は人気だと思いますね。単純に高層階は高級感がありますし、好きな人も多いんです。これはもう完全に好みの問題ですね」
デメリットも少なくないとはいえ、タワーマンション高層階の人気は今後もまだまだ衰えることはなさそうだ。(山田井ユウキ)
(R25編集部)