仙台圏で新築マンションの平均販売価格の高騰が続いている。東日本大震災からの復興需要で工事費が上がり、新規供給量が縮小したのが要因。過去最低水準 の住宅ローン金利を背景に、消費者の購買意欲も旺盛だ。平均販売価格は既にバブル期を突破。業界内では「もっと上昇する」との見方が少なくない。(報道 部・勅使河原奨治)
「立地環境の良さが決め手。価格は気にならなかった」。野村不動産が昨年9月に販売を始めた仙台市太白区のプラウドシティ仙台長町南(192戸)。太白区の男性会社員(42)は購入理由を歯切れ良く語る。
仙台市地下鉄長町南駅まで徒歩3分。第2期まで販売した計155戸は全て即日完売した。価格は3LDKで4000万~4500万円。残る物件も完売が見込まれている。
広告代理店のDGコミュニケーションズ仙台支社によると、仙台圏の平均販売価格は2013年で3559万円。14年は3913万円に上り、バブル期の91年の3534万円をしのぐ。
仙台圏の新築マンション供給戸数は08年のリーマンショック前は年間2000戸前後だった。その後、1000戸前後で推移したが、14年は574戸にとどまった。15年も1000戸程度になる見込みで、品薄感は続く。
金融緩和による低金利の影響も大きい。返済期間が最長35年の住宅ローン「フラット35」の5月の貸出金利は1.46~2.08%(返済期間21年以上、融資率9割以下)で過去最低水準。富裕層を中心に価格より立地で選ぶ消費者が増え、価格高騰に拍車を掛ける。
中古物件も立地の良い青葉区中心部などで上昇傾向にある。10年前の取得時の価格と同額で売り出される物件も出ている。
青葉区一番町2丁目に三井不動産レジデンシャル、住友不動産、野村不動産が共同で開発したマンションは、3月末の入居開始直後から中古物件が出回る。「入 居するつもりが、市況を見て売りに出す人もいるようだ」(大手デベロッパー)。購入時4000万~5000万円の物件が約2割高で売られているという。
14年に供給がほとんどなかった青葉区中心部では今後、400戸の供給が予定される。このうち3月末に販売を始めた本町のマンションは、5000万~7000万円でほぼ完売。ことしはさらに新たな価格市場が形成されそうだ。
復興とオリンピック需要で工事費は高止まりするとみられ、価格下落要因は乏しい。DGコミュニケーションズの吉野敦仙台支社長は「仙台の街の実力を考えると、これまでが安すぎた。当面は震災前の価格水準に戻ることはないのではないか」と予想する。