マンション業界、激変した10年の舞台裏

7月27日付日本経済新聞は、2013年の国内の「主要商品・サービスシェア調査」(対象100品目)をまとめた。1~3位の合計シェアが60%を超えたのは53品目、80%以上のものが24品目もあった。強いブランド力を持つ上位企業へのシェア集中が鮮明になった。
 清涼飲料業界は上位メーカーの寡占化が進んだ。08年のリーマン・ショック前までは日本コカ・コーラグループが独走し、サントリー、キリンビバレッジ、伊藤園、アサヒ飲料の5社に集約されていた。13年はコカ・コーラ、サントリー食品インターナショナル、アサヒ飲料の上位3社のシェアが前年より2.4ポイント上昇し、63.0%に拡大。4位の伊藤園、5位のキリンビバレッジを突き放した。首位を激しく追い上げているのがサントリーだ。シェアはコカ・コーラが29.0%で、サントリーが22.4%。かつて11ポイント以上開いていた両社の差が、6.6ポイントに縮まった。
 同調査で首位が交代した品目としては、戸建て住宅販売では割安な分譲戸建てを販売する飯田グループホールディングス(GHD)がトップになった。飯田GHDは13年11月に一建設、アーネストワンなど6社が統合して誕生した。7.9%のシェアを取り、2位の積水ハウスを4.3ポイント上回った。
 マンション販売は三井不動産レジデンシャルが初めて首位になった。20年の東京五輪開催が追い風となり、東京湾岸の大型物件が想定を上回るペースで完売するなどして、シェアを1.6ポイント伸ばし、野村不動産をかわした。ちなみに前年の12年は野村不動産が初めてトップに立ったが、同業界では首位が毎年入れ替わる状況が続いている。下記は、00年と13年のマンション供給戸数の上位5社のランキングだが、業界勢力図が一変していることが分かる。
※以下、順位、企業名、供給戸数(戸) 
【2000年】                 
1位:大京、9,007      
2位:三井不動産、6,149
3位:住友不動産、5,879
4位:ダイア建設、5,153       
5位:穴吹工務店、4,372       
【2013年】
1位:三井不動産レジデンシャル、7,476
2位:野村不動産、6,517
3位:リクルートコスモス、5,702 
4位:三菱地所レジデンス、5,599
5位:大京、2,913
(不動産経済研究所調べによる)
●苦境に陥った独立系
 00年は独立系のマンション販売業者が群雄割拠の状態だった。だが、独立系は苦境に陥る。首位を独走していた「ライオンズマンション」の大京は、04年に産業再生機構の支援を受けた。UFJ銀行(現・三菱東京UFJ銀行)の不良債権処理の一環である。UFJ銀の債権放棄や99%減資という荒療治を経てオリックスに売却され、現在はオリックスが63.7%の株式を保有する。
 リクルートコスモスはリクルートが不動産事業から撤退したのに伴い、05年、投資ファンド、ユニゾン・キャピタルの出資を受けて独立。コスモスイニシアに商号変更した。09年には不動産市況の悪化で債務超過に陥り、私的整理手続きである事業再生ADRを申請。大和ハウス工業に売却された。現在、大和ハウス工業が株式の64.1%(間接を含む)を保有しており、大和ハウスグループに組み込まれている。
「ダイアパレス」ブランドのマンションを展開していたダイア建設は、03年に産業再生機構の支援第1号となり、レオパレス21の傘下に入った。08年に民事再生手続きを申請後、再生計画の認可を受け、09年に横浜市の不動産会社、大和地所の完全子会社となった。
 香川県高松市に本拠を置く穴吹工務店は、「サーパス」ブランドのマンションを地方都市で展開し、07年のマンション供給ランキングで全国1位になったこともあった。事態が急変するのが08年のリーマン・ショックに端を発する世界同時不況。カタカナ社名の新興マンション業者の経営破綻が続出し、そうした業者のマンションが中古市場に大量に放出されたことからマンション分譲価格が暴落し、穴吹工務店の収益が悪化。09年に会社更生法を申請し、大京が再建スポンサーとなった。現在、大京の100%子会社だ。
 こうした資金力の弱い独立系は淘汰され、リーマン・ショック前後でマンション業界の勢力図は劇的に塗り替わった。
 13年の供給ランキングに登場するのは大企業ばかりだ。三井不動産レジデンシャル、住友不動産、三菱地所レジデンスは、いずれも大手不動産グループの企業である。野村不動産は野村證券系、大京は独立系ではなくオリックスの子会社だ。もはや経営体力のない独立系のマンション業者が上位に食い込める余地は少ない。
(文=編集部)

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