マンション業界の秘密 「平成大バブル」の水準超え、東京の物件価格が高騰している本当のワケ

東京のマンション価格高騰が止まらない。とうとう平成大バブルの水準を超えてしまった。それで、さすがに世間では「おかしい」と考える人が多くなった。各ニュースメディアはそのことを取り上げ始めている。

ネットを見ていると、さまざまな専門家がその理由について解説している。それぞれに興味深いが、的を射たものは見当たらない。みな、考えあぐねているのだろう。

私も先日、ある情報番組に呼ばれてそのことについて答えてきた。私の考えは極めてシンプル。それは「高くなっても買う人がいるから」というものだ。

東京には、2億円や3億円のマンションをキャッシュで買えるような富裕層がたくさんいる。彼らが高くなったマンションを購入しているのだ。

新築価格が上がると、中古もそれに釣られて引き上げられる。だから都心のマンション価格は全体的に高騰している。

こういった現象は、都心に限られたこと。郊外エリアでは大して価格は上がっていない。なぜなら、郊外には「住むため」に買う実需層がほとんどだからだ。

サラリーマンの平均所得はこの20年、横ばいか微減。その間、消費税や公共料金が上がったので、可処分所得は低下している。

ただ、金融緩和や住宅ローン減税によって物件は多少買いやすくなったが、それでも所得が追い付かない。だから郊外の新築市場は首都圏でも近畿圏でも死屍累々。かなりのレベルで売れていない。

こういった傾向に拍車をかけたのが、この2年間のコロナ禍である。都心で高額マンションを購入しているような富裕層は、この2年間ほとんど彼らの特権である「ぜいたく」を味わえなかった。

豪勢な海外旅行は不可能。国内でのグルメ三昧もダメ。それで、彼らはどうしたのか。

株式投資を始めた人もいるだろう。だからコロナ禍でも株価は異様に好調だった。暇つぶしにバカ高いスポーツカーや高級腕時計を買った人も多い。

あるいは沖縄のリゾートマンションに触手を伸ばした富裕層もいる。同様に熱海の不動産もよく売れている。

そういう連中は、大して必要がないのにマンションを何戸も持っていたりする。特に地方在住の富裕層などは「東京の拠点」としてのタワーマンション購入に熱心だったりする。

このコロナ禍で、日本の富裕層の実力が浮き彫りになった。彼らが東京のマンション価格高騰の主役なのだ。統計的な裏付けもある。

日本銀行が9月に発表した2021年6月末時点の個人(家計部門)の金融資産残高は、前年同月末比6・3%増の1992兆円。過去最高だそうだ。1992兆円といえば、日本のGDPの4倍近い額になる。

この国は、いつの間にか分厚い富裕層を有するようになった。多くの専門家諸氏は、そのことを見逃しているのではないかと愚考する。これがマンション価格高騰の真実だ。

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