不動産経済研究所によると、70%超で好調とされる新築マンションの4月の契約率は75.5%。昨年の平均販売価格は5060万円と22年ぶりに5000万円の大台を超え、今年4月には5305万円に達した。
実際、東京・品川区の駅から徒歩1分の好立地に、今年販売の首都圏の物件で注目度ナンバーワンというタワーマンションが建設中だが、周辺では坪単価400 万円が相場だが、このマンションは坪600万円前後。約6割の部屋が「億ション」で、最上階には4億円台の部屋もある。そんな強気の価格設定でも資料請求 件数は約2万件にも上る。
こうした億ションの人気ぶりや中古マンションの値上がり、新築マンションの各種データを見ると、昨今の不動産市 場は活況を呈しているように見える。実際、「不動産バブル」といったタイトルの新聞、雑誌報道が氾濫し、“早く買わないと乗り遅れる”というムードが醸成 されているが、それに踊らされるのは不動産会社の思うツボだ。不動産コンサルティング会社「オラガHSC」代表の牧野知弘氏が分析する。
「マンション販売価格の値上がりの大きな理由は、需要増で購入競争が激化しているからだと思われていますが、そうではありません。単純に建築費が上昇しているからです。
一般にマンション価格の内訳は土地が3割、建物が7割。それが3年前に比べて、地価上昇でマンション用地の土地代が15%程度、人件費や資材費の高騰で建 物の建築費が30%程度、それぞれアップしている。その結果、これまでは4000万円で販売できていたマンションが、5000万円以上の価格で売らないと ディベロッパーの採算が合わないので、値段を上げているだけです」
契約率が高いといっても、新築マンションのマーケット自体は縮小傾向を続けている。
「10 年前の首都圏マンションの新規供給戸数は年間10万戸ありました。ところが昨年は4万5000戸を切っており、10年前に比べてマーケットは半分以下に縮 小しています。契約率は確かに高いですが、そこから算出した昨年の販売戸数は3万5000戸くらい。現実には販売戸数は減り続けています」(牧野氏)
それを裏付ける最新データがある。不動産経済研究所によれば、4月の首都圏の新築マンション販売戸数は前年同月比7.6%減の2286戸と4か月連続で前年割れ。4月としては1992年(1365戸)以来の低水準となったのである。