■2位に大差! ぶっちぎり住友不動産
4月の消費税8%への引き上げの前後で大きく明暗が分かれた2014年のマンション販売に、ちょっとした異変が起きた。全国の販売戸数のランキングで常にベスト10に入りながら、なかなか存在感を示せなかった住友不動産が首位の座を初めて勝ち取った。
民間調査機関の不動産経済研究所が毎年公表する事業主別マンション販売ランキングによると、住友不は、上位陣が消費増税前の駆け込み需要の反動減からそろって前年実績を割り込むなかで、前年を7.3%上回る6308戸を販売し、前年の第3位から一気に首位に躍り出た。
東京五輪・パラリンピックの20年開催を見越した需要増からタワーマンションの建設ラッシュが続くベイエリアで売り出した「ドゥ・トゥ-ル」(東京・晴海、総戸数1450戸)など首都圏での大量供給が実を結んだ格好だ。しかも、前年4位から2位に浮上した三菱地所レジデンスの5300戸に1000戸近くの差をつけての圧勝だった。
このほか、14年のランキングは、3位に前年2位の野村不動産がつき、前年首位だった三井不動産レジデンシャルは4位に転落した。住友不動産の首位奪取が話題になった一方、注目された点がもう1つあった。マンション販売年間ランキングは近年、首位の座が毎年クルクル入れ替わる、まるで「猫の目」状態が定着しており、結局、14年もこのジンクスが破れなかった。
かつては「ライオンズマンション」ブランドでマンション専業として最大手に君臨していた大京が、1978年から2006年まで29年連続で首位の座を「指定席」としてきた、現状でまったく考えられない時代があった。
■旧財閥系3社と野村の寡占進む
しかし、同じく大京が08年から10年まで3年連続首位を果たしたのを最後に、マンション業界の“天下獲り”は乱戦模様が続いてきた。実際、11年以降は三菱地所、野村不動産、三井不動産といずれも初の首位に輝いたにも関わらず、翌年には首位の座を明け渡し、連続首位は成し遂げられていない。14年に首位の座を射止めた住友不動産も、このジンクスから「明日は我が身」な可能性は否めない。
昨年4月の消費税増税以降のマンション市場の厳しさからすれば、「ランキングにこだわっていられない」というのが各社の偽らざる本音に違いない。14年年間の販売戸数は前年を21%と大幅に割り込む8万3205戸と、09年以来5年ぶりのマイナスとなった。消費税増税前の駆け込み需要から10万戸を超えた前年と比べればマンション市場は、お寒い状況が続いている。
不動産経済研究所は、15年の販売戸数を前年から8.2%増の9万戸と予測する。円安への転換で資材価格は高騰したのに加え、人手不足を反映した労賃も上昇し、マンション価格は建設費の上昇を転嫁せざるを得ず、着実に上がっている。これに加え、消費税率10%への引き上げ時期が17年4月に大幅に延期されたことから、「マンション購入に様子見の動きが強まっており」(業界関係者)、マンション市場の本格回復には、しばらく時間がかかるとの見方が一般的だ。
政府による手厚い住宅取得促進策や歴史的超低金利にある住宅ローンも、なかなかマンション販売に追い風にもなっていない。ただ、ランキングに関しては、「リーマンショック」後に多くの中堅業者が市場撤退したことで、マンション販売は三菱、三井、住友の旧財閥系3社に野村不動産を加えた上位陣の寡占化が進んでおり、15年の首位争いもこの4社に絞られることは間違いない。
(経済ジャーナリスト 水月仁史=文)