◇パ・リーグ 楽天7-3オリックス(2013年10月8日 Kスタ宮城)
楽天の田中将大投手(24)が8日、オリックス戦に先発。7回を4安打2失点で、開幕24連勝、昨年8月26日からは28連勝として、有終の美を飾った。自身の通算勝利を99勝とした同戦がレギュラーシーズン最終登板で、プロ野球史上初の「無敗の最多勝投手」の誕生となった。田中は17日に開幕するクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージの第1戦(Kスタ宮城)に先発、日本一を目指す。
【写真】Kスタで声援を送るまい夫人
前人未到の偉業。素直にうれしい。ただ、まだ先がある。田中は喜びも控えめに振り返った。
「自分でもびっくり。毎年、シーズンが始まる前から全部勝つんだという気持ちでやっているが、ここまで来られるとは思ってなかった。一試合一試合、集中して臨んだ結果。ただ、まだCSがあるので、あまり(実感は)ない」
序盤は不運が続いた。味方の失策、相手の重盗で2回までに2点を失った。それでも心は折れない。試合は壊さない。ずっと開幕から続けてきたことを実践した。序盤から早打ちの相手に3回は初球から際どいコースに投じ、中軸3人を全て内野ゴロに抑えた。
今季の田中は場面に応じ、効率良く打たせて取る投球を使い分けている。リーグで田中とともに防御率1点台を誇るオリックス・金子と比較すると、金子は28試合で計3334球を投げているが田中は28試合で2981球。差は353球で1試合に要する球数を120で計算すると、3試合近い違いが生じている。球数の少なさがテンポの良さを生み、攻撃のリズムを引き出す。この日も3回に味方打線が一挙6点。田中の登板試合の平均援護点が6・18という数字が証明している。
人知れず苦悩していた。「短いイニングを全力で投げた後、(次の登板で)長い回を投げるのは難しい」。球団初優勝を決めた9月26日の西武戦(西武ドーム)で救援登板。「胴上げ投手」となってから、投球フォームのバランスに微妙なずれを感じていた。前回登板となった1日の日本ハム戦(札幌ドーム)でも下半身の力が上半身にうまく伝わらず、リリースポイントがばらけて制球に苦しんだ。毎年、短い回を投げる球宴が終わり、後半戦最初の登板で感じる違和感と同じものだった。そこで登板間はキャッチボールで力を入れず、フォーム修正に集中。6日のKスタ宮城でのブルペン投球で初めて力を入れると剛球が戻った。
24個の白星の裏には、努力が隠れている。星野監督は田中について「考えられない。素晴らしい。神の領域とそう言われても不思議ではない」と評した。
10月8日は自身3年連続勝利。94年に巨人と中日が同勝率のまま最終戦で優勝を懸けた伝説の10・8。当時5歳だった少年は19年後に「24勝0敗」という新たな伝説をつくった。無敵だったレギュラーシーズン。だが、目指すものはもう一つある。日本一。「みんなで一体になって相手より勝りたい」。田中の挑戦は終わらない。