テレビ朝日が19日、福田淳一財務事務次官のセクハラ発言の被害者が自社の女性記者だったことを公表したことに対し、識者からは自局で報じなかったことを疑問視するとともに、メディア全体での対応検討を求める声が上がった。

セクハラについての著書もある牟田和恵・大阪大大学院教授は、「自局で報道しなかった理由に『二次被害』を挙げているが、財務省に盾突かないために被害者の訴えを握りつぶしたと見られても仕方ない」と批判した。

一般企業でも社員が顧客からセクハラを受けたら、会社が顧客側に働き掛けて対処しなければならないと指摘した上で、「顧客に言いにくく、社員に我慢させることは現実としてある。しかし、メディアである以上は社会的な責任があり、財務省に抗議するのが当然だ」と話した。

服部孝章・立教大名誉教授(メディア法)は、「女性記者は上司に相談するという手順を踏んでおり、他社に情報を流したからといって懲罰の対象にすべきではない。会社側は記者のプライバシーを守った上で報道することもできたはずだ」と指摘。週刊新潮への情報提供について「世に伝えるというジャーナリストとしての使命がある。公益性や公共性を考えれば、安易に批判はできない」との見方を示した。

その上で、「同様の問題が起きた場合、取材源の秘匿と報道の使命をどう考えて対応していくのかを、メディア全体として検討する必要がある」と話した。

ジャーナリストの大谷昭宏氏は「次官の辞意表明を受け、緊急に状況を説明したのは適切だった」と述べ、被害者は自社の記者と公表した対応に理解を示した。

一方で、「結果から見ればセクハラ被害に何の行動も取らなかった」と批判し、女性記者が1年半の間、複数回次官と会食を重ねていた点についても、「相手の目的が何かを見極めるのも記者としての力量で、判断に甘さもある。先輩たちが1対1での取材方法について教える必要があったのではないか」と述べた。