メルカリ、本人確認機能を強化へ 個人情報の登録を年内にも義務化

フリーマーケットアプリ運営最大手「メルカリ」(東京都港区)が、相次ぐ違法出品などへの対策として、従来は不要だった初回出品時の住所・氏名・生年月日の登録を、年内にも義務化することが11日、関係者への取材で分かった。登録された個人情報を取引口座と照合する仕組みも導入し、偽名での売買などを防ぐ。本人確認機能を強化し、不正利用者を排除するための措置。同社は近く正式発表する。

同社のフリマアプリ「メルカリ」は手軽さが人気を呼び、シェアを拡大。一方で現金や盗難品、領収書など不適切な出品も相次ぎ、本人確認機能の強化の必要性が指摘されてきた。今回の対策強化でイメージ悪化を防ぎ、利用者の安心感を向上させる狙いがあるとみられる。

メルカリでは現在、初出品時に個人情報の登録は不要で、売買成立後、販売代金の支払いを同社に申請する際に必要となる仕組み。今回の対策で、個人情報登録を前倒しするとともに、売買時に個人情報を口座と照合し、不正取引でないかをチェックする。

同社関係者は取材に「利便性を保ちつつ、より安心して使ってもらえるアプリにする」と話している。

手軽さとギリギリのバランス

「メルカリ」は1日の出品数が100万品に上るフリマアプリ。市場調査会社「マクロミル」によると、フリマアプリ利用者の94%が使っているという。

シェア拡大を支えてきたのは、出品や購入の「手軽さ」や「気楽さ」だ。出品や購入はスマートフォンのみで可能。オークションサイトのように売買成立まで時間がかからず、商品の約半数は出品から24時間以内に売買が成立するという。

一方、シェア拡大に伴い、最近は違法な商品や倫理的に不適切な商品が出品され、大々的に報道されるケースも目立つ。

10月には、関東地方や福島県の高校から大量の野球道具を盗んだとして、窃盗容疑などで逮捕された男らが、盗んだボールをメルカリで転売していた疑いが判明。他にも現金や領収書、読書感想文などが出品された事例が話題となった。

同社関係者は「実際には不適切な出品はほんのごくわずかだが、ブラックマーケットのようなイメージが広がり、社内に危機感があった」という。「対策強化により煩雑さが増し、利用者離れが起きる恐れはある。だが、悪評を回避し、安全性を守るためにバランスを取ったギリギリのラインだ」とも明かした。

同社によると、1日100万件の出品物のうち、盗品などの疑いで警察当局から問い合わせがあるのは数件程度という。

別の関係者も「実際には不正出品対策には相当な力を入れ、警察の捜査にも全面的に協力している。そうした面はなかなか周知されない」と苦悩する。

被害補填も検討

実際、同社ではトラブル対策のため、カスタマーサポート部門に250人を配置。365日24時間体制で違反商品の出品などの監視を行っている。

また同社は、今回の対策強化に加え、既に一部で開始している人工知能(AI)を用いた不正検知能力を高め、出品物が盗品だと判明した際は、被害者に損害額の補填(ほてん)を行うことなども検討しているという。

ただ、ITジャーナリストの三上洋さんは今回の対策強化について、「運転免許証など、顔写真や住所の記載された身分証明書の提示を求めるなどの方法を併用しなければ不十分だ」と指摘。「対策を万全にすることで、インターネット上のCtoC(個人間取引)ビジネスを牽引(けんいん)する会社としての責任を果たすことになる」と話している。

<メルカリ> インターネット上でフリーマーケットのように品物を売買できる国内最大規模のスマートフォンアプリ。サービス開始は平成25年で、ダウンロード数は国内5000万件超、海外2500万件超。出品者は品物の写真と商品説明、価格を入力する。購入は“早い者勝ち”で、購入者は代金を運営会社に支払う。運営会社は手数料を差し引いた金額を出品者に支払う。売買成立の早さ、手軽さなどが特長とされる。(菅野真沙美)

タイトルとURLをコピーしました