先月30日から一般公開が始まった東京モーターショー。今回は「自動運転車元年」と呼ばれ、これが展示の目玉になっている。自動運転車は2020年の東京五輪で先導車を務める可能性が高く、政府も日本の技術力を世界に誇示すべく後押ししている。
モーターショーに先立ちトヨタ自動車は都内の首都高速で自動運転車を公開、報道陣を同乗させ、運転者がハンドルから手を離していても勝手に車線変更する 技術などを見せた。日産自動車は「リーフ」の自動運転車が先月31日、東京湾岸沿いの一般道17キロを走り、手離し運転でも横断歩道の歩行者を認識してス ピードを落とし、左折するところを見せた。
自動運転技術は日進月歩で、次世代技術の覇権を握ろうと、IT業界も虎視眈々と参画、ビジネスチャンスを狙っている。その代表格が米グーグルだ。グーグ ルは無人の完全自動運転を目指しており、いずれタクシーや輸送トラックなど物流分野に進出、人件費削減を売り物にしようともくろんでいる。
しかし、こうした進化を苦々しく思っているのが警察庁なのである。
「自動運転になると、人工知能(AI)を載せた車が信号や標識を認識するため、スピード違反などの交通違反が激減し、罰金収入が減る。AIが交通規制を把握しているため、点数稼ぎの待ち伏せ的な取り締まりもできなくなる。だから、いい顔をしないんです」
年間1000億円近くある罰金は警察庁ではなく、国庫に入る。とはいえ、その金が信号機や道路標識の建設資金として都道府県に流れる仕組みで、そこに警察の天下り先団体が関与している。つまり、交通違反の罰金は大きな利権なのだ。
「あるメーカー幹部によると、今回のデモンストレーションに関しても、警察は相当、ピリピリしていたといいます。事前に自動運転の計画を届け出たところ、オーバーに手を離したところをテレビに撮影させるな、など細かいことを言ってきたそうです」
業界にしてみれば、思わぬ横やりである。