東北大大学院医学系研究科の呉繁夫准教授(臨床遺伝学)らの研究グループは、日本人に多い脳の難病「モヤモヤ病」の発症にかかわる遺伝子を突き止めた。高い確率で脳卒中を引き起こす深刻な疾患だが、これまで原因不明とされてきた。今回の発見により、遺伝子検査で発症リスクを予測し、早期治療で脳卒中を予防できる可能性が高いという。
呉准教授らは2005年から08年にかけて、東北大病院などのモヤモヤ病患者70人と健康な人400人の血液を採取し、DNAを解析。患者の約70%は特定の染色体上の遺伝子「RNF213」の配列に、健康な人にはない変異が見つかった。変異がある人の発症率は、変異のない人の約190倍に上ることも分かった。
モヤモヤ病は日本人に患者が集中している。子どもやきょうだいなど家族も発症するケースが多いことから、遺伝子の関与が指摘されてきた。
今回の研究で発症にかかわる遺伝子が初めて特定された。家族らの遺伝子を検査し、変異が見つかった場合、早期に脳の手術などを行えば脳卒中の発生を防ぐことが可能になるという。
呉准教授は「遺伝子検査でリスクがないかどうか確認し、家族の不安を取り除くことができる」とした上で、「今後、変異のあった遺伝子の機能を詳しく調べることで、脳卒中の新たな治療や予防につなげられる可能性もある」と話している。
研究成果は米国時間の4日、日本人類遺伝学会誌(英文・電子版)に掲載される。
[モヤモヤ病]脳底部の動脈が徐々に狭まる一方、細い異常血管が増殖し、脳梗塞(こうそく)や脳出血を引き起こす。患者の大半は日本や韓国など東アジアに集中し、日本人患者は世界最多の約8000人。1963年に東北大医学部教授の故鈴木二郎氏が発見。エックス線で見ると、たばこの煙のように見えることから69年に命名された。